
元国民的アイドルグループSMAPのリーダーとして知られる中居正広さんが、元フジテレビアナウンサーの渡邊渚さんとされるX子さんとの間に起きたとされるトラブルを巡り、なぜ逮捕に至っていないのか、多くの人々の関心を集めています。特に注目されているのが、両者間で交わされたとされる示談書の中に「今後、X子さんは中居氏に刑事罰を求めない」という趣旨の条項が盛り込まれていたとの報道です。この条項は一体何を意味し、中居正広さんの性暴力疑惑や逮捕の可能性にどのような影響を与えているのでしょうか。
この問題は、単なる芸能スキャンダルとしてだけでなく、著名人の性的行為に関する問題、示談のあり方、そして法的な側面など、多くの論点を含んでいます。ネット上では様々な憶測や情報が飛び交い、元大阪府知事で弁護士の橋下徹さんなど、各界の著名人も意見を発信するなど、社会的な議論を呼んでいます。
この記事では、現在までに報じられている情報を基に、以下の点について深く掘り下げ、読者の皆様が抱える疑問の解消を目指します。
- 中居正広さんと渡邊渚さん(X子さん)の間で交わされた示談書、特に「刑事罰を求めない」とされる条項がどのような経緯で、どのような内容で盛り込まれたのか、その背景にある双方の状況や意図は何か。
- この「刑事罰を求めない」条項が、中居正広さんの性暴力疑惑の事実認定や法的な扱いにどのような影響を及ぼすのか、またその限界はどこにあるのか。
- なぜ中居正広さんが現在逮捕されていないのか、その具体的な法的理由や背景には何があるのか。示談書の条項、非親告罪化された性犯罪の扱い、捜査実務などを踏まえて解説。
本記事を通じて、複雑に絡み合う情報を整理し、中居正広さんが逮捕されない背景にある示談書と「刑事罰を求めない条項」の謎、そしてそれが現代社会に投げかける問題について、多角的に理解を深める一助となれば幸いです。なお、本記事は2025年6月4日現在の情報に基づいており、特定の個人を誹謗中傷する意図は一切ありません。
1. 中居正広が示談書で渡邊渚へ刑事罰を求めない条項を要求した背景と内容とは?
中居正広さんと、元フジテレビアナウンサー渡邊渚さんとされるX子さんの間で交わされたとされる示談書。その中でも特に注目を集めているのが、「刑事罰を求めない」という条項です。この条項がどのような経緯で、どのような内容で盛り込まれたのか、そしてなぜ中居正広さん側がこのような条項を要求したとされるのか、その背景には何があったのでしょうか。報道されている情報を元に、その詳細に迫ります。
1-1. 示談交渉に至る経緯:X子さん(渡邊渚さんとされる人物)による警視庁への被害届提出検討の動きはあったのか?
一連の問題の発端は、2023年6月頃に起きたとされる中居正広さんとX子さんの間のトラブルです。報道によると、X子さんはこの出来事により心身に深い傷を負い、一時は警視庁に「意に沿わない性的行為を受けた」として被害届を提出することも考えていたとされています。この時期、X子さんは精神的に極めて不安定な状態にあり、産業医やアナウンス室の上司にも被害を訴え、その苦しい胸の内を吐露していたことが報じられています。彼女が「私が代わりに死ねばよかったと思った」「知られたら生きていけない」と語ったとされる言葉からは、事態の深刻さがうかがえます。
このような状況の中、刑事事件化を避けるため、あるいは早期解決を図るために、双方の間で示談交渉が開始されたと考えられます。被害届の提出を検討していたという事実は、X子さん側が当初、単なる民事上の解決だけでなく、刑事的な責任追及も視野に入れていた可能性を示唆しています。
1-2. 示談書の締結時期と口外禁止条項:2024年1月にどのような内容で合意がなされたのか?
示談交渉の結果、2024年1月に中居正広さんとX子さんの間で示談書が正式に交わされたと報じられています。この示談には、中居正広さんからX子さんへ多額の解決金が支払われることが盛り込まれていたとされます。そして、この種の示談において一般的に見られるように、双方に対して「一連の出来事を口外しない」という口外禁止条項(守秘義務条項)も含まれていたとされています。この条項は、合意内容や事件の詳細が外部に漏れることを防ぎ、双方のプライバシーや社会的評価を保護する目的で設けられるものです。もしこの条項に違反した場合には、賠償責任が生じるという取り決めもなされていたようです。
しかし、その後、フジテレビが設置した第三者委員会の調査報告書が公表されるなど、事態は公のものとなり、この口外禁止条項の有効性や解釈についても議論の余地が生じています。
1-3. 「刑事罰を求めない」条項の具体的な文言と挿入の意図とは?司法関係者はどう見ているのか?
今回の示談書の中で最も注目されているのが、「今後、X子さんは中居氏に刑事罰を求めない」という趣旨の条項、いわゆる「宥恕(ゆうじょ)条項」が盛り込まれていたという点です。宥恕とは、被害者が加害者を許し、処罰を求めない意思を示すことを指します。この条項の具体的な文言は公表されていませんが、その存在自体が大きな意味を持つと指摘されています。
ある司法関係者は、「仮に“失恋事案”であれば、その一文は不必要。少なくとも中居氏は事態の深刻さを認識し、事件化を回避したかったと見るのが自然でしょう」とコメントしており、この条項が中居正広さん側の強い意向で挿入された可能性を示唆しています。つまり、単なる男女間のトラブルではなく、刑事事件に発展しうる事案であるという認識が中居正広さん側にあったからこそ、このような条項を盛り込む必要があったのではないか、という見方です。
1-4. 中居正広さん側がこの「刑事罰を求めない」条項を要求したとされる理由は何か?事件化を避けたいという思惑があったのか?
中居正広さん側が「刑事罰を求めない」条項を要求したとされる理由は、やはり刑事事件化を回避したいという強い動機があったと推測するのが自然です。国民的な知名度を持つ中居正広さんにとって、性的なトラブルが刑事事件として立件されれば、その社会的イメージの失墜は計り知れず、芸能活動にも致命的な影響が出かねません。したがって、X子さん側に多額の解決金を支払うことと引き換えにでも、刑事訴追のリスクを最大限に低減させたいという判断が働いたと考えられます。
また、この条項があることで、万が一将来的にX子さん側が翻意して刑事告訴に踏み切ろうとした場合でも、示談の事実と宥恕の意思表示があったことを盾に、捜査機関に対して不起訴や起訴猶予といった寛大な処分を求める材料となり得ます。このように、中居正広さん側にとっては、将来にわたる法的なリスクヘッジという意味合いも大きかったと見られます。
1-5. この「刑事罰を求めない」条項は渡邊渚さん(X子さん)側のどのような判断や状況から受け入れられた可能性があるのか?
一方で、被害を訴えていたX子さん側が、なぜこの「刑事罰を求めない」条項を受け入れたのでしょうか。これにはいくつかの可能性が考えられます。
まず、X子さん自身が、事件の詳細が公になることによる精神的負担や、さらなる二次被害を避けたいという思いがあったかもしれません。長期間にわたる刑事手続きや裁判は、被害者にとっても大きなストレスとなります。早期に解決金を得て、この問題から解放されたいという気持ちがあったとしても不思議ではありません。
また、示談交渉の中で、中居正広さん側からこの条項の受け入れが解決金の支払いにおける絶対条件として提示された可能性も考えられます。その場合、X子さん側としては、経済的な補償を得るためには受け入れざるを得ないという苦渋の判断があったかもしれません。
さらに、X子さん代理人弁護士が、仮に刑事告訴したとしても、必ずしも中居正広さんが有罪になるとは限らないことや、裁判の長期化などを考慮し、示談による早期解決がX子さんの利益にかなうと助言した可能性も否定できません。いずれにせよ、X子さん側がこの条項を受け入れた背景には、様々な葛藤や計算があったと推察されます。
2. 「刑事罰を求めない」条項は中居正広の性暴力疑惑にどう影響するのか?
示談書に「刑事罰を求めない」という宥恕条項が存在したとして、それが中居正広さんの性暴力疑惑の有無や、その後の法的な扱いにどのような影響を与えるのでしょうか。この条項が事実認定や法的手続きにおいて持つ意味、そしてその限界について、専門家の意見や法的な観点から多角的に考察します。この条項の存在は、疑惑を深める一因とも、逆に一定の区切りをつけるものとも解釈され得るため、慎重な分析が求められます。
2-1. 条項の存在が示す中居正広さん側の事態認識:「失恋事案」であるならば不必要な条項との指摘はなぜか?
司法関係者から「仮に“失恋事案”であれば、その一文は不必要」との指摘がある通り、「刑事罰を求めない」条項の存在は、中居正広さん側がこの問題を単なる恋愛のもつれや感情の行き違い(いわゆる失恋事案)とは認識していなかった可能性を強く示唆しています。もし本当に双方合意の上での関係や、恋愛感情のもつれが原因のトラブルであったならば、刑事罰を云々する条項をわざわざ示談書に盛り込む必要性は低いと言えるでしょう。
刑事罰の対象となり得るのは、暴行や脅迫を用いた強制的な性行為や、相手の同意がない性行為など、法的に問題のある行為です。そのような行為があった、あるいはそう解釈されるリスクを中居正広さん側が認識していたからこそ、将来的な刑事訴追を回避するために、この条項を重要視したと考えるのが自然です。この条項は、中居正広さん側が事態の深刻さ、つまり刑事事件化する可能性を少なからず懸念していたことの表れと解釈できます。
2-2. X子さん(渡邊渚さんとされる人物)が一貫して訴える被害内容と「性暴力」という認識の根拠は何か?
X子さん(渡邊渚さんとされる人物)は、事件直後から一貫して「意に沿わない性的行為を受けた」と主張していると報じられています。彼女が産業医や上司に語ったとされる「怖かった」「泣いていた」といった言葉や、その後の心身の不調(PTSD発症との報道も)は、彼女がこの出来事を深刻な被害として捉えていることを示しています。フジテレビが設置した第三者委員会も、X子さんからのヒアリングなどに基づき、この件を「業務の延長線上に起きた性暴力」と認定しました。
X子さん側は、中居正広さんに対して恋愛感情を抱いたことは一度もないと明確に否定しており、「自分の父親と同世代の男性に恋愛感情を抱いたり、性行為をしたいと思うことなど1ミリもありません」と語ったとされています。これらの主張や状況から、X子さん側は、中居正広さんの行為が自身の意に反するものであり、性暴力に該当するという認識を一貫して持っていると考えられます。示談に応じたことや「刑事罰を求めない」条項を受け入れたことは、必ずしも彼女が被害の認識を撤回したことを意味するものではありません。
2-3. 第三者委員会の「性暴力」認定とそれに対する中居正広さん側の反論の詳細は?
フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会は、2025年3月31日に調査報告書を公表し、中居正広さんとX子さんの間で起きたトラブルについて「業務の延長線上に起きた性暴力」と認定しました。この報告書では、両者の間に圧倒的な力関係が存在したことなども指摘されたとされています。
これに対し、中居正広さんの代理人弁護士は2025年5月12日、この「性暴力」認定を不服とし、第三者委員会の中立・公平性に疑義を呈する反論文書を発表しました。中居正広さん側は、証拠開示を求めるとともに、第三者委員会の報告書が「だまし討ち」に等しいと主張するなど、徹底して争う姿勢を見せています。具体的には、「雇用・指揮監督関係や、上下の業務的権限関係は存在しなかった」「複数回の会食の機会があり、家族やプライベートの出来事に関して様々なやりとりもあり、メールで『勇気づけられた』等のお礼をもらうような関係でもあった」などと主張し、業務の延長線上での性暴力という認定や、力関係の存在を否定しようとしています。
しかし、この反論に対しては、「お礼メールは社交辞令に過ぎない」「力関係は形式的な雇用関係だけでなく、実質的な影響力も考慮すべき」といった批判的な意見も多く出ています。X子さんの代理人弁護士も、中居正広さん側の反論を「事実と異なるものであり、看過できない」「女性に対するさらなる加害(二次加害)に他ならない」と強く抗議しています。
2-4. 橋下徹氏の「失恋事案」発言とX子さん側の強い否定:「好意を持ったことなどない」という主張の背景は?
元大阪府知事で弁護士の橋下徹さんは、この問題についてテレビ番組や自身のSNSで積極的に発言しています。橋下さんは、自身が把握している情報を基に「(中居正広さんの行為は)性暴力にはあたらない」「いわゆる失恋事案においても、後に意に反していたと相手方女性から主張されただけで社会的抹殺にも等しい最も厳しい制裁が加えられることにもなりかねない」などと述べ、第三者委員会の認定や、中居正広さんが受けている社会的制裁を批判しています。
この橋下さんの「失恋事案」という言葉が独り歩きし、ネット上では「X子さんが失恋の腹いせに中居正広さんを貶めようとしている」といった論調の誹謗中傷がX子さんに対して数多く寄せられる事態となりました。これに対し、X子さんは友人に「自分の父親と同世代の男性に恋愛感情を抱いたり、性行為をしたいと思うことなど1ミリもありません。好意を持ったことなどない」と、橋下さんの見立てやネット上の憶測を真っ向から強く否定しています。彼女にとって、この件が恋愛感情のもつれとして矮小化されることは、被害の実態を無視した二次加害に他ならず、到底受け入れられるものではないという強い憤りが感じられます。
2-5. 法的観点から見た「刑事罰を求めない」条項と性暴力認定の具体的な関係性について専門家はどう分析しているのか?
法的な観点から見ると、「刑事罰を求めない」という宥恕条項と、行為が性暴力にあたるかどうかの認定は、直接的には別の問題です。宥恕条項は、あくまで被害者が加害者に対して刑事処罰を望まないという意思表示であり、それ自体が過去の行為の法的な評価(例えば、それが性暴力であったかどうか)を左右するものではありません。つまり、示談書にこの条項があったとしても、客観的な事実に基づいて、その行為が刑法上の犯罪(例えば不同意性交等罪)に該当するかどうかは別途判断されるべき問題です。
しかし、実際の刑事手続きにおいては、被害者の処罰感情は非常に重要な考慮要素となります。特に、宥恕条項を含む示談が成立している場合、捜査機関(警察や検察)は、被害者の処罰意思が低いと判断し、起訴を見送る(不起訴処分、特に起訴猶予)可能性が高まります。これは、たとえ行為自体が犯罪に該当しうる場合であっても同様です。ただし、2017年の刑法改正により性犯罪の一部は非親告罪化されており、2023年の改正では「不同意性交等罪」が新設されるなど、厳罰化・被害者保護の方向性が示されています。非親告罪の場合、理論上は被害者の告訴がなくても、あるいは宥恕の意思があっても検察官は起訴できますが、実務上は被害者の意向が大きく影響するのが現状です。
専門家の間でも、示談の有効性や影響力については様々な意見がありますが、多くの場合、示談が成立し宥恕の意思が示されていれば、強制的な捜査や逮捕・起訴に至るハードルは著しく高くなると考えられています。ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、事案の重大性や社会的影響、新たな証拠の出現などによっては、捜査が再開されたり、異なる判断が下されたりする可能性も皆無ではありません。
3. 中居正広が逮捕されない具体的な理由はなぜ?法的側面から徹底解説
多くの国民が注目する「中居正広さんがなぜ逮捕されないのか」という疑問。この背景には、示談書の存在だけでなく、日本の刑事司法制度における様々な原則や実務上の運用が複雑に絡み合っています。ここでは、示談書に記されたとされる「刑事罰を求めない」条項の法的な意味合い、性犯罪に関する法改正の動向、そして実際の捜査機関の判断プロセスなどを踏まえ、中居正広さんが現時点で逮捕に至っていない具体的な法的理由を多角的に、そして詳細に解説していきます。
3-1. 性犯罪の非親告罪化と「刑事罰を求めない」条項の法的効力の限界とは何か?
かつて多くの性犯罪は親告罪とされ、被害者による告訴がなければ検察官は起訴することができませんでした。しかし、2017年の刑法改正により、強制性交等罪(当時)などが非親告罪化されました。これにより、被害者の告訴がない場合や、告訴が取り下げられた場合であっても、検察官の判断で加害者を起訴することが法的には可能となりました。さらに、2023年の刑法改正では「不同意性交等罪」が創設され、処罰範囲の明確化や厳罰化が進んでいます。
このような法改正の流れの中で、示談書に「刑事罰を求めない」という宥恕条項があったとしても、それが検察官の起訴権を法的に完全に縛るものではありません。検察官は、公益の代表者として、事件の悪質性、結果の重大性、社会的影響、被害者の処罰感情、加害者の反省状況など、諸般の事情を総合的に考慮して起訴・不起訴を判断します。したがって、宥恕条項はあくまで検察官が判断する上での一資料に過ぎず、絶対的な効力を持つわけではないのです。
しかし、法的な限界があるとはいえ、被害者が明確に処罰を望まない意思を示している(宥恕している)という事実は、検察官の判断に極めて大きな影響を与えるのが実情です。特に、当事者間で真摯な謝罪と相当額の賠償を含む示談が成立している場合、検察官は「被害回復が図られ、被害者の処罰感情も緩和されている」と評価し、あえて起訴に踏み切らない(不起訴処分、特に起訴猶予とする)ケースが多いと言えます。中居正広さんのケースでも、この宥恕条項を含む示談の成立が、捜査機関の積極的な介入を抑制する大きな要因となっている可能性が高いです。
3-2. 示談成立が捜査機関(警察・検察)の判断に与える実際の影響:不起訴や起訴猶予となる可能性はどの程度か?
示談の成立、特に被害者による宥恕の意思表示が含まれる場合、捜査機関の判断に与える影響は非常に大きいものがあります。日本の刑事司法においては「起訴便宜主義」が採用されており、検察官は、犯罪の嫌疑が十分であっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができるとされています(刑事訴訟法第248条)。
示談が成立し、被害者への謝罪や損害賠償が行われ、被害者が加害者の処罰を望んでいないという状況は、まさにこの「犯罪後の情況」として重視されます。特に、性犯罪においては被害者の精神的苦痛の回復が重要視されるため、示談による被害回復と処罰感情の緩和は、不起訴処分(特に起訴猶予)を選択する上で非常に有力な事情となります。
具体的な統計があるわけではありませんが、弁護士などの実務家の間では、不同意性交等罪のような重大な性犯罪であっても、被害者との間で真摯な示談が成立し、宥恕が得られている場合には、初犯であれば不起訴となる可能性が相当程度高まるとの見方が一般的です。中居正広さんの場合、多額の解決金による示談が成立し、かつ「刑事罰を求めない」条項が存在すると報じられていることから、仮に捜査機関が事件を認知したとしても、現時点では逮捕や起訴にまでは踏み込まないという判断がなされている可能性が考えられます。
3-3. 逮捕の要件と現状での適用可能性:証拠隠滅や逃亡の恐れは中居正広さんにあると考えられるか?
刑事事件における逮捕は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、証拠隠滅の恐れ、または逃亡の恐れがある場合などに裁判官の発する令状に基づいて行われます(刑事訴訟法第199条等)。逮捕は個人の自由を著しく制約する強制処分であるため、その要件は厳格に解釈・運用される必要があります。
中居正広さんのケースを現時点の情報で見た場合、まず「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」については、X子さん側の主張や第三者委員会の認定などがありますが、中居正広さん側はこれを全面的に争っています。仮に捜査機関が一定の嫌疑を抱いたとしても、次に証拠隠滅や逃亡の恐れが認められなければ、逮捕の要件を満たしません。
中居正広さんは日本国内に居住し、社会的にも広く知られた存在であり、家族や仕事関係者などとの結びつきも強いと考えられます。このような状況下で、海外へ逃亡したり、事件に関する重要な証拠(例えばメールのやり取りなどは既に第三者委員会によって保全・分析されている可能性も)を組織的に隠滅したりする恐れが高いとは、現時点では考えにくいでしょう。また、既に示談が成立し、X子さん側が処罰を望まない意向を示している(とされる)状況も、逮捕の必要性を低下させる方向に働きます。これらの要素を総合的に勘案すると、現段階で中居正広さんに対して逮捕状が請求され、発付される可能性は低いと言わざるを得ません。
3-4. 被害者の意向の重要性:渡邊渚さん(X子さん)の現在の処罰感情は捜査にどう影響するか?
前述の通り、性犯罪が非親告罪化されたとはいえ、被害者の意向、特に処罰感情は捜査機関の判断や量刑に大きな影響を与えます。X子さん(渡邊渚さんとされる人物)が示談書において「刑事罰を求めない」との条項に合意したとされる事実は、少なくとも示談成立時点においては、彼女が中居正広さんに対する刑事処罰を強くは望んでいなかった、あるいは処罰を求めることよりも示談による早期解決と経済的補償を優先したと解釈できます。
ただし、被害者の感情は時間経過やその後の状況変化によって変わり得るものです。例えば、示談成立後に加害者側から誠意のない対応があったり、二次加害と受け取れるような言動が繰り返されたりした場合、被害者が再び処罰を強く望むようになることもあり得ます。X子さんの代理人弁護士が、中居正広さん側の反論を「二次加害」と厳しく批判している点は注目されます。もしX子さんが、中居正広さん側のその後の対応によって精神的苦痛をさらに受け、改めて刑事処罰を求める意思を捜査機関に伝えた場合、それは捜査の再開や処分の見直しにつながる可能性もゼロではありません。
しかし、一度宥恕の意思を示した被害者が、後にそれを覆して処罰を求めることは、法的に不可能ではないものの、捜査機関や裁判所に対して一定の説明を要することになります。現状では、X子さんの代理人が二次加害に対して抗議しているものの、明確に「刑事罰を求める」と再度意思表示したとの報道は見られず、示談の効力は依然として捜査機関の判断に影響を与え続けていると考えられます。
3-5. 2023年改正刑法「不同意性交等罪」の適用可能性と今後の捜査が開始される条件とは?
2023年7月13日に施行された改正刑法では、従来の「強制性交等罪」及び「準強制性交等罪」が「不同意性交等罪」に一本化・改正されました。この改正の大きなポイントは、処罰対象となる行為類型が明確化・拡充されたことです。具体的には、暴行・脅迫を用いるケースだけでなく、アルコール・薬物の影響、睡眠その他の意識不明瞭な状態、恐怖・驚愕、経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力によって拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難な状態に乗じて性交等を行う行為などが処罰対象として列挙されました。中居正広さんとX子さんのトラブルが起きたとされるのは2023年6月であり、改正法施行前ですが、事件の性質によっては、改正法の趣旨が捜査や公判における評価に影響を与える可能性も考えられます。
今後の捜査が開始または再開される条件としては、以下のようなケースが考えられます。
- 新たな重要証拠の発見: 例えば、中居正広さん側の主張と矛盾する客観的な証拠(録音、映像、第三者の証言など)が新たに出てきた場合。
- 被害者の処罰意思の明確な変化: X子さん側が示談を破棄する、あるいは無効を主張し、改めて中居正広さんに対する刑事処罰を強く求める意思を捜査機関に明確に伝えた場合。
- 別件での捜査: もし中居正広さんが、今回の件とは別の、新たな刑事事件に関与した疑いが生じ、その捜査の過程で今回の件についても再度注目が集まるような場合。
- 社会的・法的な状況の変化: 性犯罪に対する社会の認識や法制度がさらに変化し、過去の事案に対してもより積極的な捜査・訴追が求められるような風潮になった場合(ただし、法の不遡及の原則があるため、行為時の法律が適用されるのが原則です)。
しかし、これらはあくまで一般論であり、具体的な事案においては、個別の事情が複雑に絡み合って捜査機関の判断がなされます。示談が成立し、一定の時間が経過している現状では、よほど重大な新事実が出てこない限り、捜査が開始・再開されるハードルは高いと言えるでしょう。
3-6. 中居正広さん側と第三者委員会の対立、今後の展開が逮捕の可能性に影響することはあるのか?
中居正広さん側は、フジテレビの第三者委員会が公表した「性暴力」認定を含む調査報告書に対して、その中立性や事実認定に強く反論し、証拠開示を求めるなど徹底して争う姿勢を示しています。一方、第三者委員会側は「事実認定は適切だった」とし、X子さんへの二次被害の観点から中居正広さん側との今後のやり取りを差し控えるとしており、両者の主張は平行線を辿っています。
この対立が直接的に中居正広さんの逮捕の可能性に影響を与えるかというと、直結はしないと考えられます。第三者委員会はあくまで企業が設置した私的な調査機関であり、その報告書に警察や検察を法的に拘束する力はありません。捜査機関は、第三者委員会の報告書を参考にすることはあっても、それとは独立して自ら証拠を収集し、法に基づいて逮捕や起訴の判断を行います。
ただし、この対立の過程で、例えば中居正広さん側が反論のために提出した資料や、あるいはX子さん側が再反論のために公表した情報の中に、これまで明らかになっていなかった重大な事実が含まれており、それが捜査機関の関心を引くような場合には、間接的に影響が出る可能性は否定できません。また、この対立が長引き、社会的な注目度が高い状態が続けば、捜査機関としても事態の推移を注視し続けるでしょう。しかし、現状では、この対立自体が直ちに逮捕につながるような状況とは言えません。あくまでも、刑事手続きは法と証拠に基づいて進められるものであり、当事者間の民事的な争いや、第三者機関との見解の相違が、そのまま刑事責任の有無や逮捕の必要性に結びつくわけではないのです。
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