【闇】大川原化工機冤罪はなぜ?真犯人は誰?公安部長・宮園勇人・増田美希子を徹底調査

大川原化工機冤罪事件 東京新聞
大川原化工機冤罪事件 東京新聞

「大川原化工機冤罪事件」という言葉を耳にしたことはございますでしょうか。この事件は、無実の中小企業が、ある日突然、国家権力によって犯罪者に仕立て上げられそうになった、恐るべき冤罪事件です。警視庁公安部による強引な捜査は、一人の尊い命を奪い、企業の信用を著しく傷つけました。2025年現在も、その波紋は広がり続けています。

いったい、なぜこのような悲劇が起きてしまったのでしょうか。そこには、個人の功名心だけでなく、警察組織の構造的な問題や、「経済安全保障」という時代のキーワードが見え隠れしています。この記事では、大川原化工機冤罪事件が「なぜ起きたのか」、その驚くべき真相に深く迫ります。捜査を主導したとされる中心人物、宮園勇人元警部や、当時警視庁外事1課長であった増田美希子氏(現福井県警本部長)の関与はどのようなものだったのでしょうか。そして、事件発生時の公安部長は誰で、どのような責任を負うべきなのでしょうか。私たちは、 उपलब्ध情報に基づき、これらの疑問を徹底的に調査し、分かりやすく解説していきます。

この記事をお読みいただくことで、以下の点が明らかになるはずです。

  • 大川原化工機冤罪事件の詳しい経緯と、事件が引き起こされた根本的な理由
  • 捜査に関わった主要な人物、特に宮園勇人氏と増田美希子氏の具体的な行動とその影響
  • 事件当時の警視庁公安部長の名前、そして組織としての責任の所在に関する考察
  • なぜ日本で冤罪事件が後を絶たないのか、その背景にある構造的な問題点
  • この悲劇的な事件から私たちが学び、二度と繰り返さないために何ができるのか

複雑に絡み合った事件の糸を一つ一つ丁寧に解きほぐし、白日の下に晒された真実へとご案内します。この事件は、決して他人事ではありません。私たちの社会のあり方、そして正義とは何かを問い直す、重要なきっかけとなるでしょう。

目次

1. 大川原化工機冤罪事件とは?一体何があったのか、事件の全貌をわかりやすく解説

大川原化工機冤罪事件は、日本の警察・検察による捜査のあり方に大きな疑問を投げかけた事件です。まずは、この事件がどのようなものであったのか、その概要と経緯を正確に把握することから始めましょう。いつ、どこで、誰が、何をされ、そしてどのような経過を辿ったのでしょうか。このセクションでは、事件の全体像を時系列に沿って、分かりやすく解説していきます。

1-1. 事件の概要:いつ、どこで、誰が何をされたのか?

この事件の舞台となったのは、神奈川県横浜市に本社を置く化学機械メーカー「大川原化工機株式会社」です。同社は、主に食品や医薬品の製造に使われる噴霧乾燥機(スプレードライヤー)の設計・製造を手掛ける、業界でも高い技術力を持つ中小企業でした。事件は2020年3月11日、警視庁公安部によって、同社の大川原正明社長(当時)、島田順司元取締役、そして病気療養中だった相嶋静夫元顧問の3人が、外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の容疑で突然逮捕されたことから始まります。容疑は、軍事転用が可能な噴霧乾燥機を、経済産業大臣の許可を得ずに中国などに輸出したというものでした。

しかし、逮捕・起訴された製品は、実際には規制対象の基準を満たしておらず、そもそも「不正輸出」には当たらないものでした。にもかかわらず、警視庁公安部は強引な捜査を進め、3人を長期にわたり勾留しました。この過酷な勾留中に、がんを患っていた相嶋静夫さんは病状が悪化し、2021年2月に保釈されたものの、その直後に亡くなるという悲劇も起きています。捜査のずさんさや人権侵害ともいえる取り調べが次々と明らかになり、結果として検察は2021年7月30日、初公判の直前に異例の起訴取り消しを行いました。これにより、事件は冤罪であったことが確定したのです。

1-2. 捜査から起訴、そして異例の起訴取り消しまでの経緯を時系列で整理

大川原化工機冤罪事件の経緯は複雑ですが、主要な出来事を時系列で整理すると、事件の全体像がより明確になります。以下に、捜査開始から起訴取り消し、そしてその後の国家賠償請求訴訟に至るまでの流れをまとめます。

年月日出来事
2013年10月噴霧乾燥機が外為法政省令改正により、一部機種が輸出許可制度の対象となる。
2017年春頃警視庁公安部外事1課5係が、民間企業の輸出管理担当者向け講習会で噴霧乾燥機の規制を知り、捜査を開始。
2020年3月11日警視庁公安部が、大川原化工機の大川原正明社長、島田順司元取締役、相嶋静夫元顧問の3名を外為法違反容疑で逮捕。
2020年3月~3名は長期にわたり勾留され、厳しい取り調べを受ける。相嶋静夫さんは勾留中にがんが悪化。
2021年2月5日約11ヶ月ぶりに大川原社長らが保釈される。
2021年2月7日相嶋静夫さんが胃がんにより死去(享年72)。
2021年7月30日東京地方検察庁が、初公判の4日前に「公訴維持は困難」として公訴取り消しを東京地方裁判所に申し立て、公訴棄却が決定。事実上の冤罪確定。
2021年9月8日大川原化工機と社長、元取締役、相嶋さんの遺族が、国(検察)と東京都(警視庁)に対し、約5億7000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起。
2023年7月(報道)国家賠償請求訴訟の証人尋問で、捜査に関わった現職警察官が「事件は捏造」「(大川原化工機は)いけにえにされた」などと証言。
2023年12月27日東京地裁(桃崎剛裁判長)が、警視庁公安部と東京地検の捜査・起訴を「違法」と認定し、国と東京都に合わせて約1億6200万円の賠償を命じる判決を下す。
2025年5月28日東京高裁(平木正洋裁判長)が、一審判決を支持し、国と東京都の控訴を棄却。賠償額は約1億6600万円に増額。捜査の違法性を改めて厳しく指弾。

この時系列からも、捜査開始から逮捕、そして起訴取り消しに至るまで、異常な経過を辿ったことがうかがえます。特に、現職警察官による「捏造」証言や、裁判所による捜査機関の明確な違法認定は、この事件の特異性を際立たせています。

1-3. なぜ注目された?噴霧乾燥機と輸出規制のポイント

この事件で焦点となった「噴霧乾燥機(スプレードライヤー)」とは、液体状の原料を熱風の中に霧状に噴霧し、水分を瞬間的に蒸発させて粉末製品を製造する機械です。インスタントコーヒーの粉末、粉ミルク、医薬品、洗剤など、私たちの身の回りにある多くの製品が、この技術を用いて作られています。大川原化工機は、この分野で高い技術力を持つリーディングカンパニーの一つでした。

問題となったのは、この噴霧乾燥機が2013年の外為法関連政省令の改正により、一定の条件下で輸出規制の対象品目に加えられたことです。規制の理由は、高性能な噴霧乾燥機が悪用された場合、生物兵器や化学兵器の製造に転用される恐れがあるためでした。具体的には、装置内部を滅菌または殺菌できる機能があり、かつ一定以上の粒子径や処理能力を持つものが規制対象とされました。

しかし、警視庁公安部が問題視した大川原化工機の製品「RL-5型スプレードライヤ」は、水分蒸発量が最大10kg/hであり、省令が規制対象とする「0.4t/h(400kg/h)以上」という基準を大幅に下回っていました。また、生成される粉末の平均粒子径も規制基準外であるなど、複数の点で規制要件を満たしていませんでした。経済産業省の技術担当者も捜査段階で「規制対象外ではないか」との見解を示していたにもかかわらず、公安部はこの意見を無視し、独自の解釈で捜査を強行したのです。この「規制対象か否か」という技術的な判断の誤認、あるいは意図的な無視が、冤罪を生む大きな要因となりました。

1-4. 被害者となった大川原化工機とはどんな会社?

大川原化工機株式会社は、1982年(昭和57年)に設立された、噴霧乾燥技術を中心とする化学機械メーカーです。本社は横浜市都筑区にあり、事件当時は従業員約90名の中小企業でした。同社は、顧客のニーズに合わせたオーダーメイドの噴霧乾燥装置を得意とし、食品、医薬品、化学製品など幅広い分野で国内トップクラスのシェアと技術力を誇っていました。

特に、医薬品や機能性食品など、高度な品質管理が求められる分野での実績が豊富で、その技術力は国内外で高く評価されていました。長年にわたり培ってきた信頼と実績は、この冤罪事件によって大きく揺らぐことになります。社長らが逮捕されたという報道は、取引先や金融機関に深刻な不安を与え、経営にも多大な影響を及ぼしました。無実が証明された後も、失われた時間と信用を取り戻すには、計り知れない困難が伴います。この事件は、一企業の存続をも脅かす、権力の暴走の恐ろしさを示しています。

2. 大川原化工機冤罪事件はなぜ起きた?その驚くべき理由と背景を徹底追及

なぜ、技術的にも法律的にも無理筋であったはずの捜査が強行され、結果として悲劇的な冤罪事件が起きてしまったのでしょうか。このセクションでは、事件発生の背景にある警察組織内部の事情や、捜査担当者たちの動機、そして時代の空気といった要因を深く掘り下げ、事件が起きた驚くべき理由に迫ります。そこには、単なる捜査ミスでは片付けられない、根深い問題が横たわっていました。

2-1. 「成果第一号」へのこだわり?警視庁公安部の暴走した捜査とは

捜査関係者の証言や報道によると、警視庁公安部外事1課5係は、新しい規制での「立件第1号」という実績に強いこだわりを持っていたとされています。2013年に噴霧乾燥機が輸出規制の対象となった後、この新規定での検挙実績はまだありませんでした。公安部内部では、「新しいもの好き」な気質があり、注目度の高い「第1号案件」を成功させることで、組織内での評価を高めようとする動機があったのではないかと指摘されています。

大川原化工機が捜査線上に浮上したのは2017年春頃、公安部の捜査員が民間企業向けの輸出管理講習会に参加し、噴霧乾燥機の規制について知ったことがきっかけでした。この「成果第一号」への過度な執着が、客観的な証拠よりも「事件を作り上げること」を優先させるという、捜査の方向性を歪めた可能性が考えられます。一度「立件ありき」で捜査が始まると、それに合致する情報だけが集められ、矛盾する事実は軽視されたり、場合によっては排除されたりする危険性が高まります。この事件では、まさにその危険性が現実のものとなったのです。

2-2. 「中小企業を狙え」宮園勇人警部(当時)の指示が示す捜査の歪み

事件の捜査を実質的に率いていたとされるのが、当時、警視庁公安部外事1課5係の係長だった宮園勇人警部(事件後に昇任、その後定年退職)です。複数の捜査関係者の証言として報じられている衝撃的な言葉が、「大企業だと警察OBがいる。会社が小さすぎると輸出自体をあまりやっていない。100人ぐらいの中小企業を狙うんだ」というものです。この発言は、捜査対象の選定において、事件性の有無よりも「扱いやすさ」や「組織的な抵抗の少なさ」を優先する姿勢を示唆しています。

大川原化工機は従業員約90名の中小企業であり、警察OBも雇用していませんでした。まさに、宮園氏が示した「狙いやすい」条件に合致していたのです。このような捜査方針は、法の下の平等を著しく害するものであり、警察権力の恣意的な行使そのものです。無実の企業が、単に「扱いやすい」という理由で捜査対象とされ、人生や経営を破壊されるなど、あってはならないことです。この指示は、捜査の初期段階から、公正さよりも成果を優先する歪んだ構造があったことを物語っています。

2-3. 輸出規制の曖昧な法解釈:「乾熱殺菌」という独自ルールの誕生

噴霧乾燥機が輸出規制の対象となるのは、生物兵器の製造に転用される恐れがあるため、「内部を殺菌できるもの」という要件がありました。国際的な基準では、この殺菌方法は「化学物質」を使用するものと具体的に定められていました。しかし、日本の国内法である経済産業省の輸出規制に関する省令では、殺菌方法が具体的に限定されておらず、表現が曖昧でした。この曖昧さが、公安部による独自の解釈を生む余地を与えてしまったのです。

公安部が捜査の過程で作り上げたのが、「乾熱殺菌」という独自の解釈でした。これは、装置に付属しているヒーターで内部を高温に加熱し続ければ、装置内の菌が死滅し、結果として殺菌が可能になるという論理です。しかし、この「乾熱殺菌」という方法は、業界の常識とはかけ離れており、多くの専門家やメーカーがその実効性を否定していました。経済産業省も当初はこの解釈に否定的でしたが、公安部は強引にこの独自解釈を押し通そうとします。宮園勇人氏は、この曖昧な法令について「ザル法だ。解釈を作れるのはチャンスだ」と発言したと報じられており、法の抜け穴を悪用してでも立件しようとする姿勢がうかがえます。この独自解釈の強弁が、事件を冤罪へと導く大きな一歩となりました。

2-4. 経済安全保障ブームが招いた悲劇か?背景にある組織的要因とは何か

大川原化工機事件が起きた2010年代後半から2020年代初頭は、国際的に「経済安全保障」という概念が急速に重要視されるようになった時期と重なります。先端技術の流出防止や、サプライチェーンの強靭化などが国家的な課題として認識され、警察組織内でも経済事案や技術流出事案への関心が高まっていました。特に警視庁公安部は、伝統的なテロ対策やスパイ活動の捜査に加え、経済安全保障分野での実績を上げることを新たなミッションとして捉えていた可能性があります。

当時の安倍晋三政権下でも経済安全保障は重要政策の一つとされ、警察庁もこの分野での成果をアピールしたいという思惑があったと考えられます。実際に、大川原化工機事件は立件後、警察内部で高く評価され、警察庁長官賞や警視総監賞を受賞し(後にいずれも返納)、警察白書でも経済安全保障の成果事例として取り上げられました。このような「ブーム」ともいえる状況下で、現場の捜査機関が成果を急ぎ、多少強引な手法を用いてでも検挙実績を上げようとするインセンティブが働いたことは想像に難くありません。大川原化工機は、この大きな流れの中で、いわば「見せしめ」や「実績作りのための標的」にされたのではないか、という指摘もなされています。

2-5. 警察内部からの告発:現職警察官が語った「捏造」の実態

この事件の異常性をさらに際立たせたのが、捜査に関わった現職の警察官たちが、法廷という公の場で自らの組織の捜査手法を厳しく批判したことです。2023年の国家賠償請求訴訟の証人尋問では、少なくとも3人の現職警察官が、捜査の問題点を証言しました。その中には、「決定権を持っている人の欲で立件した」「事件は捏造」「(大川原化工機は)いけにえにされた」といった衝撃的な言葉が含まれていました。

これらの内部告発は、単なる捜査ミスや見込み違いではなく、意図的に事件が作り上げられた可能性を示唆するものです。捜査の初期段階で、大川原化工機の製品が規制対象外である可能性を示す情報はあったにもかかわらず、それらの情報は上層部に正確に伝わらず、あるいは無視されたとされています。また、被疑者の取り調べにおいても、捜査員の意に沿った供述調書が作成され、それに署名するよう強要されたり、訂正を求めた調書が破棄されたりしたという証言も出ています。こうした内部からの声は、組織の自浄作用が働かなかったこと、そして一部の捜査幹部による強引な捜査指揮の実態を浮き彫りにしました。現職の警察官がこのような証言をすることは極めて異例であり、事件の深刻さを物語っています。

3. 真犯人は誰?警察組織の問題点と責任の所在を多角的に検証

大川原化工機冤罪事件において、しばしば「真犯人は誰か」という問いが立てられます。これは、特定の個人を指すというよりも、なぜこのような理不尽な事件が起きてしまったのか、その根本的な原因や責任の所在を明らかにしたいという願いの表れでしょう。このセクションでは、事件を生み出した警察組織の構造的な問題点や、捜査に関わった人々の責任について、多角的な視点から検証していきます。

3-1. 「真犯人」とは何を指すのか?冤罪を生んだ構造的問題

この事件における「真犯人」を特定の個人に帰するのは難しいかもしれません。むしろ、冤罪を生み出したのは、警察組織内に存在するいくつかの構造的な問題が複合的に絡み合った結果であると考えられます。主な問題点としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 成果至上主義・功名心: 検挙実績や「第1号案件」といった目に見える成果を過度に重視する組織風土。個人の昇進や評価が、客観的な事実よりも「手柄」に左右される構造。
  • 縦割り組織と情報共有の欠如: セクショナリズムが強く、部署間や上下間での適切な情報共有が行われない。都合の悪い情報が上層部に上がりにくい、あるいは握り潰される体質。
  • 内部牽制機能の不全: 捜査の行き過ぎをチェックする内部の仕組みが十分に機能していない。異論を唱えにくい、あるいは唱えても聞き入れられない風通しの悪さ。
  • キャリア・ノンキャリア制度の問題: キャリア組とノンキャリア組との間での意識の違いや、指揮命令系統における力関係が、捜査の方向性に影響を与える可能性。
  • 「人質司法」と取り調べの問題点: 長期勾留による自白強要や、捜査機関に都合の良い供述調書の作成といった、日本の刑事司法が抱えるかねてからの問題。
  • 専門知識の軽視: 今回の事件では、輸出規制に関する技術的な専門知識が捜査において軽視され、誤った解釈がまかり通ってしまった。

これらの問題が複雑に絡み合い、一度誤った方向に進み始めた捜査を誰も止めることができなかった、あるいは止めようとしなかったことが、冤罪事件という最悪の結果を招いたと言えるでしょう。真の「犯人」は、こうした組織的な欠陥そのものであるとも言えます。

3-2. 捜査を主導した警視庁公安部外事1課5係とはどんな部署?

今回の事件の捜査を直接担当したのは、警視庁公安部の外事1課5係でした。警視庁公安部は、日本の首都・東京の治安維持を担う警視庁の中でも、特に国家の安全に関わる事案を担当するエリート集団とされています。その中でも外事課は、国際テロ、スパイ活動、そして不正輸出などの経済安全保障に関わる事案の捜査を専門としています。

外事1課は、主にロシアや東欧諸国に関連する情報収集や捜査、そして不正輸出事案全般を担当するとされています。その中の「5係」が、具体的にどのような役割分担であったかの詳細は公表されていませんが、この事件では噴霧乾燥機の不正輸出疑惑の捜査を一手に担いました。公安部の捜査は、その性質上、秘密主義が徹底され、外部からは実態が見えにくいという特徴があります。この閉鎖性が、時に捜査の暴走を許す土壌となる可能性も指摘されています。

3-3. なぜ捜査は止まらなかった?内部でのチェック機能不全の深刻な実態

捜査が進む中で、大川原化工機の製品が規制対象外である可能性を示す情報や、捜査手法の問題点を指摘する声は、警察内部にも存在したと報じられています。例えば、経済産業省の担当者が規制対象外との見解を示したことや、一部の捜査員が捜査方針に疑問を抱いていたことなどが伝えられています。それにもかかわらず、なぜ捜査は止まらず、逮捕・起訴へと突き進んでしまったのでしょうか。

その背景には、深刻な内部チェック機能の不全があったと考えられます。国家賠償請求訴訟での現職警察官の証言によれば、島田順司元取締役の取り調べにおいて、島田さんが不正輸出を認めるような供述調書に一度サインしたものの、後にその内容に抗議し、担当の安積伸介警部補が新しい調書を作り直した際、元の調書をシュレッダーで破棄したという事実がありました。これは公用文書毀棄罪にあたる可能性のある行為です。この事実を知った外事1課5係の警部補4人が、当時の外事1課ナンバー2であった渡辺誠管理官(警視)に「ちゃんと調べてください」と直訴しましたが、渡辺管理官はこれを取り合わなかったとされています。このような上司の対応は、現場の捜査員が抱いた正当な疑念や問題提起を封じ込め、捜査の暴走を容認、あるいは助長したと言わざるを得ません。都合の悪い情報は上層部に伏せられ、立件へと突き進む現場を誰も止めることができなかった、あるいは止めようとしなかった実態が浮かび上がります。

3-4. 検察の役割とは?起訴取り消しに至るも拭えぬ疑問点

警察が捜査した事件を起訴するか否かを最終的に判断するのは検察の役割です。検察は「正義の番人」として、警察の捜査をチェックし、不当な起訴を防ぐという重要な責務を負っています。しかし、この事件では、検察もそのチェック機能を十分に果たしたとは言えません。大川原化工機事件を担当した検事は3人いたとされています。最初の担当検事と2人目の検事は、事件の立件に難色を示していたと報じられています。しかし、3人目の担当となった塚部貴子検事が最終的に起訴に踏み切りました。

捜査に関わった時友仁警部補(当時)の法廷証言によれば、塚部検事には、宮園勇人係長(当時)の指示で、公安部が作り上げた省令解釈が一般的でないことなど、捜査の問題点が十分に共有されていなかったとされています。しかし、時友警部補は起訴直前に塚部検事と面会し、公安部の解釈の問題点を伝えたところ、検事は「立件できない」と怒りを見せたと証言しています。さらに、警察の内部メモには、塚部検事が「解釈自体が、おかしいという前提であれば起訴できない。不安になってきた。大丈夫か」と不安を漏らしていたことが記されていました。にもかかわらず、社長らはその7日後に起訴されています。最終的に起訴は取り消されたものの、検察がなぜこのような重大な疑念を抱えながら起訴を強行したのか、その判断プロセスには多くの疑問が残ります。塚部検事は第一審の証人尋問で「起訴する判断に間違いがあったとは思っていない」と述べていますが、高裁判決は「検事は捜査機関の解釈に疑念を持つに足りる状況だった。社長ら3人に有罪と認められる容疑があると判断した検事の判断は合理的な根拠を欠いていた」と厳しく断じています。

3-5. 裁判所が断罪した違法捜査:東京高裁判決が示したもの

最終的に、この事件における捜査の違法性を明確に断じたのは裁判所でした。2023年12月27日の東京地裁判決、そして2025年5月28日の東京高裁判決は、いずれも警視庁公安部と東京地検による一連の捜査・起訴行為を「違法」と認定し、国と東京都に対して総額約1億6600万円の賠償を命じました。特に東京高裁の判決は、第一審よりもさらに踏み込み、公安部の捜査手法や検察の判断を厳しく批判しました。

高裁判決は、公安部が作り上げた「乾熱殺菌」という独自の省令解釈について、合理的な根拠を欠くものと一蹴しました。そして、「犯罪の成立に関する判断に基本的な問題があり、逮捕は根拠が欠如していることは明らか」と指摘し、事件化そのものを根本から否定しました。これは、単なる捜査の失敗ではなく、捜査機関による「捏造」に近い行為であったことを司法が認定したに等しいと言えます。大川原化工機側の代理人を務める高田剛弁護士は、「判決は丁寧な事実認定で、事件そのものが公安部の『捏造(ねつぞう)』だと認定したと言える」と評価しています。裁判所の判決は、警察・検察という強大な権力がいかに容易に暴走しうるか、そしてその暴走が個人の人権や企業の存立基盤をいかに深刻に破壊するかを改めて示したものと言えるでしょう。

4. 公安部長の名前とは?誰が事件当時のトップだったのか、その責任と関与を調査

警視庁公安部という巨大な組織が暴走したとされるこの事件において、当時のトップ、すなわち公安部長は誰だったのか、そしてその人物はどのような責任を負うべきなのかという点は、多くの人が関心を寄せるポイントです。このセクションでは、事件当時の警視庁公安部長の名前を特定し、その人物の経歴や事件への関与の可能性について、報道されている情報を基に調査します。

4-1. 事件当時の警視庁公安部長は誰?名前と経歴を特定

大川原化工機の社長らが逮捕された2020年3月当時、そしてそれ以前の捜査が進められていた期間における警視庁公安部長の特定は、事件の組織的責任を考える上で重要です。公開されている情報や報道によれば、大川原化工機事件の捜査が本格化し、逮捕・起訴に至った時期に警視庁公安部長の任にあったのは、近藤知尚(こんどう ともひさ)氏とされています。近藤氏は、2018年から2020年にかけて警視庁公安部長を務めていたと報じられています。

警察庁のキャリア官僚であり、公安畑を中心に経歴を重ねてきた人物とみられます。公安部長という役職は、警視庁の公安警察活動全般を統括する極めて重要なポストであり、その判断や指揮は現場の捜査に大きな影響力を持ちます。この事件における捜査方針や意思決定プロセスに、当時の公安部長がどの程度関与していたのかが焦点となります。

4-2. 近藤知尚元公安部長(当時)の関与は?報道から見える役割

近藤知尚氏(事件当時、警視庁公安部長)の事件への直接的な指示や関与の度合いについて、詳細な公式発表はありません。しかし、複数の報道や内部告発とされる情報からは、その影が浮かび上がってきます。例えば、毎日新聞の報道によれば、公安部が経済産業省に対し家宅捜索を行う際に、近藤氏がそれを後押ししたとの内部証言があるとされています。また、捜査の過程で得られた大川原化工機側に有利な検証結果を握り潰した、あるいは上層部に上げなかったといった疑惑も一部で報じられています。

公安部長という立場にあれば、このような重大事件の捜査状況について報告を受け、重要な局面での意思決定に関与していたと考えるのが自然です。もし、現場の捜査の違法性や問題点を認識しうる立場にありながら、それを看過した、あるいは積極的に推進したのであれば、その組織的責任は免れません。ただし、これらの報道内容はあくまで疑惑の段階であり、近藤氏本人の公式な見解や反論は明らかになっていない点には留意が必要です。

4-3. 上層部の責任はどこに?組織としての意思決定プロセスとは

一連の捜査の暴走は、現場の特定の捜査員だけの問題として片付けられるものではありません。警視庁公安部という組織全体の意思決定プロセスに問題があった可能性が指摘されています。公安部長をはじめとする上層部が、現場からの報告をどのように受け止め、どのような指示を出していたのか。そこには、成果を求めるプレッシャー、誤りを認められない組織文化、あるいは特定の派閥や個人の意向が強く働くような構造があったのかもしれません。

通常、重要な事件の捜査においては、係長、管理官、課長、そして公安部長といったラインで情報が上がり、指示が下されると考えられます。この過程のどこかで、客観的な事実に基づかない判断や、違法な捜査を容認するようなゴーサインが出された可能性があります。あるいは、見て見ぬふりをしたという不作為の責任も問われるべきでしょう。組織としての責任を明らかにするためには、この意思決定プロセスを徹底的に検証する必要がありますが、警察組織の秘密主義の壁は厚く、その全貌解明は容易ではありません。

4-4. 捜査の暴走を黙認・推進したとされる上司たちの現在

この事件で捜査の指揮に関わったとされる警察官僚や上司たちのその後の処遇も、国民の関心事です。報道によれば、捜査を主導した宮園勇人氏は事件後に昇任し、外事1課の管理官であった渡辺誠氏も同様に昇任し、両名とも責任を問われることなく定年退職したとされています。このような処遇は、組織として事件の問題性を真摯に受け止めていないのではないか、という疑念を抱かせます。

また、当時の公安部長であった近藤知尚氏の事件後の経歴については、詳細な情報が追いきれていませんが、通常、警察キャリア官僚は数年単位で異動を繰り返します。仮に事件の責任が明確に問われないまま他の要職に就いているとすれば、それは警察組織の自浄作用の欠如を示すものと言えるでしょう。国民の信頼を著しく損ねた冤罪事件において、指揮系統上にあった者たちの責任の所在を曖昧にすることは、再発防止の観点からも極めて問題です。

5. 宮園勇人元警部(当時係長)の関与とは?「中小企業狙い」指示の真相とその後

大川原化工機冤罪事件において、捜査を実質的に指揮した中心人物として名前が挙がるのが、当時、警視庁公安部外事1課5係の係長であった宮園勇人氏です。彼の言動や捜査手法が、事件を大きく歪めた元凶の一つとされています。このセクションでは、宮園勇人氏とは何者なのか、彼の具体的な関与、そして事件後の処遇について、報道されている情報を基に掘り下げます。

5-1. 宮園勇人とは何者?経歴と人物像に迫る

宮園勇人(みやぞの はやと)氏は、大川原化工機事件の捜査当時、警視庁公安部外事1課5係の係長で、階級は警部であったと報じられています。ノンキャリアの警察官として警視庁に入庁し、主に公安畑を歩んできた人物とみられます。彼の詳細な経歴は公表されていませんが、外事事件の捜査経験が豊富であった可能性が考えられます。複数の捜査関係者の証言として伝えられる宮園氏の人物像は、「剛腕」であり、部下に対して厳しい指示を出すタイプの捜査指揮官であったようです。

「大企業だと警察OBがいる。会社が小さすぎると輸出自体をあまりやっていない。100人ぐらいの中小企業を狙うんだ」といった発言は、彼の捜査に対する姿勢や価値観を象徴するものとして、事件を報じる多くのメディアで取り上げられました。このような捜査対象の選定基準は、法の下の平等に反するものであり、極めて問題視されています。

5-2. 「ザル法だ。解釈を作れる」発言の意図と捜査への影響は?

宮園勇人氏の捜査手法を語る上で欠かせないのが、輸出規制の曖昧な法令解釈に関する発言です。噴霧乾燥機の輸出規制において、殺菌方法が国内省令で具体的に限定されていなかった点について、宮園氏は「ザル法だ。解釈を作れるのはチャンスだ」と述べたと報じられています。この発言からは、法の不備を悪用してでも立件しようとする、極めて積極的かつ強引な捜査姿勢がうかがえます。

この認識のもと、公安部は「乾熱殺菌」という独自の解釈を編み出し、これを根拠に大川原化工機の製品を規制対象だと断定しました。この独自解釈は、業界の常識や専門家の意見、さらには経済産業省の当初の見解とも異なるものでしたが、宮園氏を中心とする捜査チームはこれを強引に押し進めました。この「解釈の創作」が、事件を冤罪へと導いた決定的な要因の一つとなったことは間違いありません。法の厳格な適用ではなく、自らの都合の良いように法をねじ曲げる行為は、法治国家の根幹を揺るがすものです。

5-3. 強引な取り調べと供述調書の作成:何が行われたのか?

宮園勇人氏が率いた捜査チームによる取り調べは、強引なものであったとされています。逮捕された大川原化工機の社長や元取締役らは、長期間にわたる勾留の中で、厳しい取り調べを受けました。特に、元取締役の島田順司さん(72)に対しては、計39回にも及ぶ任意の取り調べが行われ、その中で島田さんが不正輸出を認めるかのような供述調書が作成され、サインさせられたと報じられています。

島田さんは後に、この調書の内容に抗議し、担当の安積伸介警部補は新しい調書を作り直しましたが、元の調書はシュレッダーで細断されました。このような捜査員の意に沿った供述を引き出そうとする強圧的な取り調べや、不都合な証拠の隠滅とも取れる行為は、適正な捜査手続きを逸脱するものです。捜査の指揮官であった宮園氏が、こうした強引な手法を容認、あるいは指示していた可能性が指摘されています。これらの取り調べの実態は、日本の刑事司法が抱える「人質司法」の問題点を改めて浮き彫りにしました。

5-4. 事件後の宮園勇人氏の処遇:昇進と退職、責任は問われたのか?

これほど重大な冤罪事件を引き起こした中心人物の一人とされながら、宮園勇人氏の事件後の処遇は、多くの国民にとって納得のいくものではありませんでした。報道によれば、宮園氏は大川原化工機事件の後、警視庁の警備課長などに昇進しました。そして、この事件の捜査における「功績」が認められ、警察庁長官賞や警視総監賞も一旦は受賞しています(これらの賞は後に返納)。

最終的に、宮園氏は捜査の責任を明確に問われることなく、定年退職したとされています。このような結果は、警察組織の自浄作用が働いていないこと、そして冤罪を引き起こしたことに対する責任感が欠如しているのではないか、という厳しい批判を招いています。組織として過ちを認め、関係者の責任を明確にしなければ、同様の事件が再発する可能性を否定できません。宮園氏個人の責任追及がなされなかったことは、この事件が残した大きな課題の一つです。

5-5. 裁判での証言:宮園勇人氏が語った捜査の正当性とは

宮園勇人氏は、大川原化工機側が国と東京都を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の第一審に証人として出廷し、自らが行った捜査の正当性を主張しました。その証言の中で宮園氏は、「私は(国際基準ではなく)日本の法律である省令によって(捜査が)行われるべきだと考えていた。日本企業が不正輸出したならば、外事1課として取り締まる必要性は感じた」と述べたと報じられています。

この証言は、あくまで国内法に基づいて適正に捜査を行ったという宮園氏の立場を示すものです。しかし、その国内法の解釈自体が独自のものであり、専門家や業界の常識からかけ離れていたという点が、裁判所によって厳しく指摘されています。たとえ本人が正当性を信じていたとしても、その結果として無実の人々が逮捕・勾留され、一人の命が失われたという事実はあまりにも重大です。宮園氏の法廷での主張は、結果責任という観点から見れば、到底受け入れられるものではないでしょう。

6. 増田美希子氏(現福井県警本部長)の関与とは?外事1課長時代の役割と現在の評価

増田美希子本部長 福井テレビチャンネル
増田美希子本部長 福井テレビチャンネル

大川原化工機冤罪事件の捜査が進んでいた時期に、警視庁公安部外事1課長という重要なポストに就いていたのが、増田美希子氏です。彼女はその後もキャリアを重ね、2025年現在は福井県警本部長を務めています。事件当時の増田氏の役割や関与、そして現在の評価について、多くの関心が寄せられています。このセクションでは、増田美希子氏の経歴や事件との関わり、そして現在の状況について、報道を基に詳しく見ていきます。

6-1. 増田美希子氏とはどんな人物?華麗なる経歴と現在の役職

増田美希子(ますだ みきこ)氏は、東京大学教養学部を卒業後、2000年に警察庁に入庁したキャリア警察官僚です。その経歴は華々しく、警備・公安畑を中心にキャリアを重ねてきました。カナダでの大使館勤務経験もあり、国際感覚も備えたエリートとして知られています。警視庁においては、大川原化工機事件の捜査が行われていた2020年8月に外事1課長(警視正)に就任しました。これは、従来のノンキャリアの課長からキャリアの課長へと変わったタイミングであり、注目されました。外事1課長の後は、公安部の筆頭課である公安総務課長、公安部参事官といった要職を歴任し、警察庁に戻った後、警察庁警備局警備運用部警備2課長などを務めました。

そして、2025年4月には福井県警本部長に就任しました。女性の県警本部長はまだ数が少なく、福井県警では初の女性本部長となります。その着任会見では、原発警備や拉致問題など、福井県が抱える課題への取り組みについて抱負を語っています。SNSなどでは、その容姿や経歴から「美人すぎるキャリア警察官」として話題になることもありましたが、その実力は警察組織内でも高く評価されているとされています。

6-2. 事件当時の役職と具体的な関与:外事1課長として何をした?

増田美希子氏が警視庁公安部外事1課長に就任したのは2020年8月です。これは、大川原化工機の社長らが逮捕(2020年3月)された後であり、捜査が進行し、公判に向けて準備が進められていた時期にあたります。外事1課長という立場は、不正輸出などを担当する同課の捜査全般を統括する責任者です。そのため、大川原化工機事件の捜査状況についても報告を受け、指揮を執る立場にあったと考えられます。

報道によれば、増田氏は外事1課長就任直前まで警察庁外事課の理事官を務めており、その当時から警視庁より大川原化工機事件に関する報告を受けていたとされています。外事1課長時代には、大川原化工機側から立件を疑問視する声が上がる中で、問題となった噴霧乾燥機に関する追加の温度実験を行うなど、補充捜査に関与したと報じられています。この補充捜査がどのような結論に至り、その後の判断にどう影響したのかは、事件の経緯を理解する上で重要なポイントとなります。

6-3. 「外事部構想」との関連は?経済安保の旗振り役としての期待

増田美希子氏が外事1課長に就任した背景には、当時の警察組織内における「外事部門の強化」という大きな流れがあったと指摘されています。2000年代以降、国際テロや経済安全保障の重要性が増す中で、警察庁は外事警察の体制強化を進めていました。増田氏のキャリアとしての外事1課長就任は、この流れを象徴するものと捉えられていました。

一部報道では、増田氏が外事1課長に就任した頃、捜査員の間で公安部から外事部門を独立させる「外事部構想」がささやかれていたとされています。その布石として、キャリアである増田氏が就任し、情報を一元化しようとしているのではないか、という憶測も流れました。増田氏自身も、経済安全保障政策を推進した安倍晋三元首相の政策を評価していると周囲に話していたとされ、経済安保の旗振り役としての期待もかけられていたようです。大川原化工機事件は、この経済安全保障分野での実績作りの一環として位置づけられていた可能性があり、増田氏のリーダーシップのもと、捜査が推し進められたという見方も存在します。

6-4. 内部検証報告の破棄疑惑とは?報道内容を整理

大川原化工機事件をめぐっては、捜査の正当性を疑問視する内部情報があったにもかかわらず、それが適切に処理されなかった疑惑が持たれています。特に増田美希子氏に関連して一部で報じられているのが、内部検証報告の破棄に関与したのではないかという疑惑です。ただし、この点に関する具体的な証拠や公式な調査結果は明らかにされていません。

一般的に、捜査機関内部で問題が指摘された場合、検証が行われ報告書が作成されることがあります。もし、大川原化工機事件に関しても、捜査の妥当性や製品の規制該当性について、捜査機関内部で否定的な見解や疑問点がまとめられた報告書が存在し、それが増田氏の指示あるいは了承のもとに破棄されたり、内容が改ざんされたりしたとすれば、それは極めて重大な問題です。真相究明のためには、このような疑惑についても徹底的な調査が求められますが、警察組織の閉鎖性から、その実態が明らかになることは困難を伴います。

6-5. 増田美希子氏の現在の評判と福井県警本部長としての言動

増田美希子氏は、2025年4月に福井県警本部長という要職に就任し、新たなキャリアをスタートさせています。着任会見では、福井県の治安課題である原子力関連施設の警備や拉致問題への取り組みについて、「思い入れの強い分野」と述べ、強い意欲を示しました。また、自身が子育てをしながら共働きをしてきた経験を踏まえ、職員が生き生きと働ける職場環境づくりにも取り組むと語っています。これらの発言からは、リーダーシップと細やかな配慮を併せ持つ人物像がうかがえます。

一方で、大川原化工機冤罪事件における彼女の関与を問題視する声も依然として存在します。事件当時の外事1課長という立場から、捜査の最終段階における意思決定に深く関わっていた可能性は否定できません。今後、福井県警本部長としての手腕が注目されると同時に、過去の事件における責任について、どのように向き合っていくのかも問われ続けることになるでしょう。国民の警察に対する信頼は、このような個々の警察官僚の姿勢によっても大きく左右されるため、その言動は常に注視されています。

7. ネット上の反応と専門家の意見:この事件が社会に問いかけるもの

大川原化工機冤罪事件は、その衝撃的な内容から、インターネット上でも多くの議論を呼び、様々な意見が交わされました。また、法律家やジャーナリストなどの専門家からも、事件の背景にある問題点や、日本の刑事司法制度の課題を指摘する声が上がっています。このセクションでは、ネット上の主な反応や専門家の見解を紹介し、この事件が私たちの社会に何を問いかけているのかを考えます。

7-1. 国民の声:事件に対する怒り、悲しみ、そして警察への不信感

インターネット上のニュースコメントやSNSなどでは、大川原化工機冤罪事件に対する国民の率直な声が数多く見受けられました。その多くは、無実の企業と個人が受けた被害に対する同情や、強引な捜査を行った警察・検察に対する強い怒り、そして深い悲しみを示すものでした。

特に多く見られた意見としては、以下のようなものがあります。

  • 警察・検察への強い不信感:「こんなことが許されていいのか」「権力の暴走だ」「誰が責任を取るんだ」といった、捜査機関に対する厳しい批判が相次ぎました。特に、警察官僚が責任を問われずに昇進していることへの不満の声は大きかったです。
  • 「人質司法」への批判: 長期勾留や強圧的な取り調べによって自白を強要するような、日本の刑事司法における「人質司法」の問題点を改めて指摘する意見が多く見られました。
  • 組織ぐるみの隠蔽体質への懸念: 都合の悪い情報を隠蔽したり、誤りを認めようとしない警察組織の体質に対する強い懸念が示されました。「トカゲの尻尾切りで終わらせるな」という声もありました。
  • 宮園勇人氏や増田美希子氏個人への言及: 捜査を主導したとされる宮園勇人氏や、当時外事1課長だった増田美希子氏の名前を挙げ、その責任を問う声も少なくありませんでした。
  • 国家公安委員会の対応への不満: 事件後の国家公安委員長の記者会見で、具体的な検証や謝罪について言及がなかったことに対し、「他人事のようだ」「国民を守る気があるのか」といった批判的な意見が出ました。
  • 再発防止を求める声:「二度と同じような悲劇を繰り返してはならない」「徹底的な真相究明と再発防止策を」といった、制度改革を求める切実な声も多く寄せられました。

これらの声は、国民がこの事件をいかに重く受け止めているか、そして日本の司法システムに対する信頼がいかに揺らいでいるかを示しています。一連のコメントは、警察や検察が自らの過ちを真摯に反省し、国民からの信頼回復に努める必要性を強く訴えかけています。

7-2. 専門家はどう見る?冤罪事件の構造的問題点と今後の課題

法律家や刑事司法制度に詳しい専門家からは、大川原化工機冤罪事件は氷山の一角であり、日本の警察・検察組織が抱える構造的な問題点が露呈したケースであるとの指摘が多くなされています。主な論点としては、以下の点が挙げられます。

  • 捜査機関の評価制度の問題: 検挙数や有罪率といった数値目標が、捜査官に過度なプレッシャーを与え、強引な捜査や証拠の捏造を誘発する危険性。今回の事件における「成果第一号」へのこだわりも、この問題と関連している可能性があります。
  • 取り調べの可視化の不備: 日本の取り調べは、依然として密室で行われることが多く、弁護人の立ち会いや録音・録画が不十分です。これにより、捜査官による不当な誘導や自白強要が行われやすい環境が温存されているという指摘があります。
  • 検察のチェック機能の形骸化: 本来、検察は警察の捜査を監督し、不当な起訴を防ぐ役割を担っていますが、警察と一体化して有罪獲得を目指す傾向が強く、チェック機能が十分に果たされていないという批判があります。
  • キャリア制度と組織風土: 警察庁のキャリア官僚と都道府県警のノンキャリア警察官との関係性や、上意下達の組織風土が、自由な意見交換を妨げ、誤った捜査方針を修正できない要因となっている可能性が指摘されています。
  • 「人質司法」の弊害: 保釈が認められにくい運用や、長期勾留による精神的な圧迫が、無実の人々にも虚偽の自白を強いる状況を生み出しています。相嶋静夫さんが勾留中に亡くなったことは、この問題の深刻さを象徴しています。

専門家は、これらの構造的な問題点にメスを入れない限り、同様の冤罪事件は今後も繰り返される危険性があると警鐘を鳴らしています。捜査機関の透明性の確保、取り調べの全面可視化、検察の独立性の強化、そして裁判所の積極的な役割などが、今後の課題として挙げられています。

7-3. 再発防止のために何が必要か?求められる警察・検察改革

大川原化工機冤罪事件のような悲劇を二度と繰り返さないためには、警察・検察のあり方そのものに対する抜本的な改革が求められます。具体的な再発防止策として、以下のような点が議論されています。

  • 第三者機関による捜査検証制度の確立: 捜査の過程で問題が発覚した場合や、冤罪が明らかになった場合に、警察・検察から独立した第三者機関が徹底的に原因を究明し、責任の所在を明らかにする仕組みが必要です。
  • 取り調べの全過程の録音・録画(可視化)の完全義務化: 捜査の透明性を高め、不当な取り調べを防ぐために、取り調べの全過程の録音・録画を例外なく義務付けるべきです。弁護人の立ち会いも積極的に認める必要があります。
  • 証拠開示制度の拡充: 検察官が保有する証拠を弁護側に全面的に開示する制度を確立し、被告人の防御権を実質的に保障する必要があります。
  • 検察官の客観義務の徹底: 検察官は、有罪を求めるだけでなく、被告人に有利な証拠も収集・提出する「客観義務」を負っています。この義務の遵守を徹底させるための教育や制度設計が求められます。
  • 警察官・検察官の評価制度の見直し: 単に検挙数や有罪率だけでなく、適正手続きの遵守や人権への配慮といった質的な側面も評価する制度へと転換する必要があります。
  • 「人質司法」からの脱却: 逃亡や証拠隠滅のおそれがない限り、保釈を原則とする運用に改め、不必要な長期勾留を避けるべきです。
  • 内部告発者の保護と奨励: 組織内部の不正や問題点を指摘する者が不利益を被らないよう、内部告発者を保護する制度を強化し、自浄作用が働く組織文化を醸成することが重要です。

これらの改革は、捜査機関にとっては厳しいものかもしれませんが、国民の信頼を取り戻し、真に公正な司法を実現するためには不可欠です。大川原化工機事件の被害者や遺族の「二度と同じような目に遭う人が現れないように」という切実な訴えに、社会全体で応えていく必要があります。

8. まとめ:大川原化工機冤罪事件の全貌と教訓、なぜ起きたのか、真犯人は誰か、そして宮園勇人・増田美希子両氏の関与について

本記事では、社会に大きな衝撃を与えた「大川原化工機冤罪事件」について、なぜこのような事件が起きたのか、その背景にある構造的な問題、捜査に関わった主要人物たちの動向、そして事件が私たちに突きつける教訓について詳細に見てきました。改めて、この事件の核心と、そこから得られるべき重要なポイントを整理します。

この事件は、単なる捜査ミスや一部の警察官の暴走として片付けられるものではありません。そこには、以下のような深刻な問題が複雑に絡み合っていました。

  • 事件の核心:
    • 警視庁公安部が、輸出規制対象外の製品を「不正輸出品」と強引に断定し、大川原化工機の社長らを逮捕・起訴した事件です。
    • 捜査の過程で、強引な取り調べや証拠の解釈の歪曲が行われ、結果として一人の尊い命が失われました。
    • 検察は初公判直前に起訴を取り消し、その後の国家賠償請求訴訟では、東京地裁・高裁ともに捜査の違法性を認定し、国と東京都に賠償を命じました。
  • なぜ起きたのか(原因と背景):
    • 警視庁公安部内における「成果第一号」への過度なこだわりと、手柄を求める功名心が捜査を歪めた可能性があります。
    • 宮園勇人元警部(当時係長)による「中小企業を狙え」という指示や、「ザル法だ。解釈を作れる」といった発言に象徴される、法の軽視と強引な捜査手法が大きな原因となりました。
    • 輸出規制に関する法令の曖昧な解釈(「乾熱殺菌」という独自ルールの創作)を強行したことが、事件の根幹にあります。
    • 「経済安全保障」という時代の要請が、実績作りのための強引な捜査を後押しした側面も否定できません。
    • 警察組織内部のチェック機能不全、情報共有の欠如、上意下達の組織風土が、誤った捜査を止めることができなかった要因と考えられます。
  • 真犯人は誰か(責任の所在):
    • 特定の個人だけでなく、事件を生み出した警察・検察組織の構造的な欠陥そのものが「真犯人」と言えるかもしれません。
    • 捜査を直接指揮した宮園勇人元警部の責任は極めて重いと言わざるを得ません。
    • 当時外事1課長であった増田美希子氏(現福井県警本部長)や、公安部長であった近藤知尚氏など、指揮命令系統上にあった上司たちの監督責任も厳しく問われるべきです。
    • 検察も、警察の捜査の問題点を見抜けず、あるいは看過して起訴に至った責任は免れません。
  • 宮園勇人氏の関与:
    • 捜査の初期段階から「中小企業狙い」を指示し、輸出規制の独自解釈を主導するなど、事件の方向性を決定づけた中心人物とされています。強引な取り調べや供述調書作成にも深く関与した疑いが持たれています。
  • 増田美希子氏の関与:
    • 逮捕後に外事1課長として着任し、補充捜査などに関わったとされています。事件の捜査を統括する立場にあり、その判断や指示が捜査の最終局面に影響を与えた可能性があります。内部検証報告の破棄疑惑も一部で報じられています。
  • 事件の教訓と今後の課題:
    • 捜査機関の権力の暴走は、いかに容易に個人の人権を踏みにじり、人生を破壊するかを改めて示しました。
    • 「人質司法」の問題点、取り調べの可視化の必要性、証拠開示のあり方など、日本の刑事司法制度が抱える課題が浮き彫りになりました。
    • 警察・検察組織の徹底した自己改革と、外部からの厳しい監視、そして国民一人ひとりがこの問題を自分事として捉え、声を上げ続けることの重要性が示されました。
    • 二度とこのような悲劇を繰り返さないために、具体的な再発防止策(第三者機関による検証、評価制度の見直しなど)の実現が急務です。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

こんにちは、地元めしが大好きなクオーゼイです。

IT業界の片隅で働きながら、人生の潤いを「食」と「情報」に求めて生きています。

美味しいもののためなら、どこへでも!気になるお店やグルメイベントがあれば、フットワーク軽く駆けつけます。食レポには自信アリ。

そして、もう一つの好物が「情報」。特に、華やかな芸能界の裏側や、ニュースの行間から見えてくる社会の動きには目がありません。生い立ちが理由…というわけではないですが、政治や公務員の世界に関する「ここだけの話」も、色々知っていたりします。(ブログでどこまで書けるかは、試行錯誤中です!)

ここでは、絶品グルメ情報はもちろん、テレビや新聞だけでは分からない芸能・時事ネタの裏側(?)や、IT業界の小ネタなどを、ざっくばらんに語っていきます。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次