
2025年5月、女優の広末涼子さん(44歳)が「双極性感情障害(躁うつ病)」および「甲状腺機能亢進症」と診断され、当面の間、全ての芸能活動を休止し、心身の回復に専念することを公式サイトで発表しました。このニュースは多くの人々に衝撃を与え、広末さんの体調を心配する声が広がっています。
広末さんは、2025年4月に高速道路で追突事故を起こし、搬送先の病院で看護師に暴行を加えた疑いで逮捕・送検されましたが、その後処分保留で釈放され、都内の医療機関に入院していました。事故前後の不可解な言動も報じられており、今回の病名公表に至った経緯が注目されています。
この記事では、広末涼子さんが公表した双極性障害(躁うつ病)と甲状腺機能亢進症について、以下の点を中心に、提供された情報源や専門家の見解、ネット上の反応などを網羅的にまとめ、詳しく解説していきます。
- 広末涼子さんの病名公表までの経緯と現在の状況
- 元夫キャンドル・ジュン氏が過去に語った広末さんの不安定さとの関連
- 双極性障害(躁うつ病)1型の具体的な症状と診断基準
- 治療薬の副作用として知られる「アカシジア」とは何か?
- 双極性障害(躁うつ病)の考えられる原因(遺伝、ストレスなど)
- 双極性障害と症状が似ている「統合失調症」との違いや鑑別点
- 併発している「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」との関係性
広末さんの状況や関連する病気について深く理解するための一助となれば幸いです。
1. 広末涼子さんが双極性障害(躁うつ病)と甲状腺機能亢進症を公表:経緯と現在の状況

広末涼子さんが双極性障害と甲状腺機能亢進症という診断名を公表するに至った背景には、2025年4月に起きた一連の出来事があります。ここでは、事故から病名公表までの経緯と、事務所の発表内容、そして公表に対する世間の反応を詳しく見ていきましょう。
1-1. 事故から逮捕、病名公表までの時系列
広末涼子さんを巡る状況が大きく動いたのは2025年4月のことでした。以下に、主な出来事を時系列でまとめます。
日付 | 出来事 |
---|---|
2025年4月7日 | 静岡県掛川市の高速道路で、広末涼子さん運転の乗用車が大型トレーラーに追突する事故が発生。事故直前に立ち寄ったサービスエリア(SA)で見知らぬ人に「広末でーす」と大声で声をかけたり抱きついたりするなどの異常行動が目撃される。事故後も高速道路上を歩き回るなどの不安定な様子を見せる。 |
2025年4月8日 | 搬送先の静岡県島田市内の病院で、看護師を蹴ったり引っ掻いたりして怪我を負わせたとして、傷害の疑いで静岡県警掛川署に現行犯逮捕される。取り調べ中も興奮したり、要領を得ない説明を繰り返したりしたとされる。 |
2025年4月10日 | 危険運転致傷の疑いで、都内の自宅が家宅捜索を受ける。違法薬物の影響は確認されなかった。 |
2025年4月16日 | 看護師との示談が成立したことなどから、処分保留のまま浜松西警察署から釈放される。その後、都内の医療機関に入院。個人事務所を通じて当面の活動休止と医療機関での診断を受けることを発表。 |
2025年5月2日 | 個人事務所の公式サイトにて、「双極性感情障害」および「甲状腺機能亢進症」と診断されたことを公表。当面の間、全ての芸能活動を休止し、心身の回復に専念することを発表。現在も医師の管理のもと治療を継続しており、今後は通院しながら自宅療養を行うとした。 |
事故から逮捕、そして病名の公表という一連の流れは、広末さん自身にとっても、ファンにとっても大きな出来事でした。特に事故前後の不可解な言動は、後に公表された病気との関連性が指摘されています。
1-2. 所属事務所(個人事務所)の発表内容とその意図
広末涼子さんの個人事務所「株式会社R.H」は、2025年5月2日に公式サイトで病名を公表しました。その発表内容は以下の通りです(要約)。
- 広末涼子が4月16日の勾留解除後、都内の医療機関に入院し、「双極性感情障害」および「甲状腺機能亢進症」と診断されたこと。
- 現在も医師の管理のもと治療を継続しており、今後は通院しながら自宅療養を行うこと。
- 当面の間、全ての芸能活動を休止し、心身の回復に専念すること。
- 本人や周囲が、これまでの不調や苦しみを「体調不良」という言葉で済ませていたことを深く反省していること。
- 病名公表は、病気を理由に責任を回避する意図は一切なく、警察の調査には引き続き誠実に対応していくこと。
- 今後の状況や体調を見ながら、改めて報告する予定であること。
事務所がデリケートな病名をあえて公表した背景には、これまでの広末さんの不調に対して「体調不良」という曖昧な表現で済ませてきたことへの反省と、今回の事態を真摯に受け止め、憶測を呼ぶことを避ける意図があったと考えられます。病気を公表することで、責任逃れと捉えられる懸念もあったかもしれませんが、「責任を回避する意図は一切なく」と明記し、誠実な対応を続ける姿勢を示しました。
1-3. 病名公表に対する世間の反応とコメント
広末涼子さんの病名公表に対し、ネット上では様々な反応が見られました。その多くは、これまでの報道や元夫キャンドル・ジュン氏の発言から、何らかの精神的な問題を抱えているのではないかと感じていたという声でした。
- 「これまでの彼女の異常行動は、典型的な双極性障害だと思っていた。亡くなった妹も同じ病名で、本人も相当苦しかったと思うが、家族もかなり疲弊してしまっていた記憶が。」
- 「報道されている行動、前夫の証言から、何かしらの精神的病を抱かれているのではと感じていました。病気、病名の公表、勇気がいったと推察します。」
- 「双極性障害は実はちゃんと診断されるまでが難しい。うつ状態が長く続いて受診する人は『うつ病』と診断されやすく、抗うつ剤を処方される。ところが薬は効かず、ある日躁転して『双極性障害』だったとわかったりする。広末さんの場合は、前夫のコメントからたぶんこれだろうと感じていた人は多いと思う。」
- 「本人にお会いしたことはないが、前夫のジュンさんのお話などからこの病気を感じていた人は多かったと思う。周りも本人も病気だと思わなかったのかな。」
また、広末さんが10代の頃からトップアイドルとして活躍し、過酷なプレッシャーの中で生きてきたことへの同情や、ゆっくり療養してほしいという温かいコメントも多く寄せられました。
- 「私生活では母親でもあります。また10代の頃から一般人とは異なる人生を歩み、その弊害が積もり積もった結果な気もします。ゆっくり、しっかり、じっくり、御病気と向かい合って欲しいと思います。マスコミも静観して欲しい。」
- 「高校時代から、学校の友達に盗撮されては写真を週刊誌に売られたり。大学に入ったら、キャンパスが広末見たさの学生で埋まったり。10代の頃から、人気が有り過ぎて、ワイドショーでのバッシングも酷かった。(中略)当時から病んでたんだろうな、、」
一方で、病気であったとしても、事故や暴行が許されるわけではないという厳しい意見や、医療従事者への配慮を求める声も見られました。
- 「病気は大変だと思いますが、叩かれたり蹴られたりして怪我をする医療者への配慮もお願いします。(中略)叩いたり蹴ったりしたら謝って欲しいし、警察を介入して事実として公表して欲しい。」
病名を公表したことで、広末さん自身が自分の状況に向き合い、適切な治療を受けるきっかけになったと捉える意見も多く、「やっと医療につながることができて良かった」「とにかく医師を信頼し、無理せずに生活して行ってほしい」といった、回復を願う声が多数を占めています。
2. キャンドル・ジュン氏の発言と広末涼子さんの双極性障害(躁うつ病)との関連とは?

広末涼子さんの元夫であるキャンドル・ジュン氏は、2023年の離婚騒動の際に開いた記者会見などで、広末さんの精神的な不安定さについて言及していました。今回の病名公表を受け、これらの発言が改めて注目されています。ここでは、キャンドル・ジュン氏の発言内容と、それが示唆していた可能性、そして現在のネット上での再評価について掘り下げます。
2-1. キャンドル・ジュン氏が語った広末さんの不安定さ
キャンドル・ジュン氏は、2023年6月18日の記者会見で、広末涼子さんの状態について以下のように語っていました。
- 精神的な不安定さ: 「(出会った当初の広末は)今とは180度違う人物で、心が不安定だった」「彼女が憧れだった芸能界に若くして入り、その当時の芸能界を知るわけではないけれど、今よりも強烈なプレッシャーがあったと思う」「そういった強烈な出来事が、まじめで優等生だった彼女を何とか何とか受け止めようと必死になっていった先に心が壊れてしまったのではないかと思います」
- 豹変する様子: 「過度なプレッシャーがかかったり、不条理に出くわしてしまうと濃い化粧をして、なかなか眠ることができず、心が豹変(ひょうへん)してしまうんです」
- 不安定さの周期性: 「2年に1回くらい仕事などいろんなことで、彼女の心の安定が崩れる」
これらの発言は、当時、広末さんとの離婚問題の渦中にあったキャンドル・ジュン氏の一方的な見方と捉える向きもありましたが、広末さんが精神的に不安定な時期を繰り返していたことを示唆していました。「心が壊れてしまった」「心が豹変する」「2年に1回の周期」といった表現は、後に公表された双極性障害の症状である気分の波やエピソードの繰り返しと重なる部分があります。
2-2. 「予言」とされた発言と双極性障害の症状との関連
特に「2年に1回くらい心の安定が崩れる」という発言は、双極性障害の病相(躁状態やうつ状態のエピソード)が周期的に現れる特徴と一致する可能性が指摘されています。双極性障害の症状が現れる間隔は人それぞれですが、数ヶ月から数年単位で繰り返すことが一般的です。キャンドル・ジュン氏が具体的な周期性に言及していたことは、広末さんの状態を間近で見てきたからこその観察だったのかもしれません。
また、「過度なプレッシャーがかかると豹変する」という描写も、ストレスが双極性障害の発症や再発の引き金になることがあるという医学的知見と一致します。躁状態になると、普段とは違う行動をとったり、攻撃的になったり、衝動的な行動が増えたりすることがあり、これが「豹変」と見えた可能性も考えられます。
キャンドル・ジュン氏は会見で、広末さんを「良き妻ですし、何よりも子供たちにとって最高の母」と擁護しつつも、その不安定さについても触れていました。今回の逮捕と病名公表により、彼の発言は広末さんの状態を理解する上での一つの手がかりとして、再び注目を集めることになったのです。
2-3. ネット上でのキャンドル・ジュン氏再評価の動き
広末涼子さんの逮捕と病名公表を受けて、X(旧Twitter)などのSNSでは、キャンドル・ジュン氏に対する再評価の声が上がっています。
- 「Majiでイカれてる女を大人しくできてたキャンドル・ジュンってひょっとして有能だったのでは」
- 「結婚当時『広末涼子何でこんな人と結婚したんや…』 今『キャンドル・ジュン何でこんな人と結婚したんや…』」
- 「キャンドル・ジュンの苦労がしのばれる。」
- 「今までの広末涼子の奇行、暴れっぷりを垣間見てしまうとキャンドル・ジュンの偉大さが身に沁みてわかる」
- 「広末がやらかす度に勝手に好感度が上がる男キャンドル・ジュン」
離婚当時は、会見での発言が広末さんへのモラハラではないかと受け取る意見もありましたが、今回の出来事を経て、「キャンドル・ジュン氏が言っていたことは本当だったのかもしれない」「彼がいたからこそ、これまで大きな問題にならなかったのではないか」といった見方が広がっています。
一方で、キャンドル・ジュン氏自身にも過去の暴行や不倫疑惑が報じられたこともあり(週刊女性PRIME報道)、単純に彼を聖人化することはできないという冷静な意見もあります。しかし、少なくとも彼が語った広末さんの不安定さについては、今回の病名公表によって一定の真実味を帯びたと受け止められているようです。
離婚騒動の際には、鳥羽周作シェフがキャンドル・ジュン氏を「あいつは抹殺された方がいい」「クソっすよあいつは」などと痛烈に批判していましたが、今回の件を受けて、これらの関係性や発言も、また異なる文脈で見直されることになるかもしれません。
3. 双極性障害(躁うつ病)1型とは何か?広末涼子さんのケースとの関連は?

広末涼子さんが診断された「双極性感情障害」は、一般的に「双極性障害」または「躁うつ病」として知られています。この病気にはいくつかのタイプがありますが、特に症状の激しさによって「1型」と「2型」に分けられます。ここでは、双極性障害1型の特徴、症状、診断基準について詳しく解説し、広末さんの状況との関連性について考察します。
3-1. 双極性障害の基本的な理解:躁状態とうつ状態の波
双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁(そう)状態」と、意欲や気分が著しく低下する「うつ状態」という、正反対の気分エピソードを繰り返す脳の病気です。気分が単に落ち込む「うつ病」とは異なり、「躁状態」が存在することが最大の特徴です。
- 躁状態: 気分が高ぶり、エネルギーに満ち溢れ、活動的になります。眠らなくても平気になったり、次々とアイデアが浮かんだり、非常に多弁になったりします。しかし、判断力が低下し、浪費や危険な行動に走ったり、些細なことで激怒したり、対人関係のトラブルを起こしたりすることも少なくありません。
- うつ状態: 気分が一日中落ち込み、何も楽しめなくなり、興味や意欲を失います。不眠や過眠、食欲不振や過食、疲労感、集中力低下、自己否定感、希死念慮(死にたいと思う気持ち)などが現れます。
これらの躁状態とうつ状態の波は、数週間から数ヶ月続くことがあり、その間には気分の安定した期間(寛解期)があることもあります。しかし、治療をしないと再発を繰り返し、波の間隔が短くなったり、症状が悪化したりする傾向があります。
3-2. 双極性障害1型の特徴:激しい躁状態とは?
双極性障害は、躁状態の程度によって主に2つのタイプに分類されます。
- 双極性障害1型: 激しい躁状態(躁病エピソード)が少なくとも1回以上見られるタイプです。この躁状態は、本人の社会生活や職業生活に著しい支障をきたし、自己または他者に危害を加える可能性があるため、入院が必要になるケースが多くあります。うつ状態も経験しますが、激しい躁状態の存在が1型の診断の鍵となります。
- 双極性障害2型: 激しい躁状態(躁病エピソード)はなく、軽い躁状態(軽躁病エピソード)と、うつ状態を繰り返すタイプです。軽躁状態は、本人にとっては「調子が良い」と感じられることもあり、周囲からは「いつもより元気」「活動的」と見られる程度で、社会的な機能が著しく損なわれることは少ないです。しかし、うつ状態の期間が長く、重い傾向があり、自殺のリスクも高いとされています。
広末涼子さんのケースでは、事務所の発表では1型か2型かの区別は明記されていません。しかし、報道されている事故前のSAでの異常な行動(見知らぬ人に大声で話しかける、抱きつく)や、搬送先の病院での暴行といったエピソードは、単なる「元気さ」や「活動的」というレベルを超え、著しい興奮状態や衝動性、攻撃性を示唆しており、双極性障害1型の激しい躁状態の特徴と合致する可能性が考えられます。
精神科医の和田秀樹医師も、サービスエリアでの行動について「極端に気が大きくなった状態と考えていい。実際に行動に移すようだと双極性障害と考える」とコメントしており、躁状態の影響を指摘しています。
3-3. 双極性障害1型の主な症状と診断基準(DSM-5)
双極性障害1型の診断には、国際的な診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)などが用いられます。1型の診断には、以下の基準を満たす「躁病エピソード」が少なくとも1回存在することが必要です。
【躁病エピソードの診断基準(DSM-5要約)】
- 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、目標指向性の活動または活力が異常かつ持続的に亢進する、普段とは明らかに異なる期間が少なくとも1週間持続する(入院が必要な場合は期間を問わない)。
- 上記の期間中、以下の症状のうち3つ以上(気分が易怒性のみの場合は4つ以上)が有意な水準で認められる。
- 自尊心の肥大、または誇大性
- 睡眠欲求の減少(例:3時間睡眠で十分だと感じる)
- 普段よりも多弁である、またはしゃべり続けようとする切迫感
- 観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験
- 注意散漫(注意が重要でない、または関係ない外的刺激によって容易に転導される)
- 目標指向性の活動(社会的、職場または学校、性的)の増加、または精神運動焦燥(目的のない非目標指向性の活動)
- まずい結果を招く可能性が高い活動(例:制御のきかない買い漁り、性的無分別、愚かな事業への投資)への熱中
- この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、または自分自身や他人に害を及ぼすことを防ぐために入院が必要であるほど重篤である、あるいは精神病性の特徴(幻覚や妄想など)を伴う。
- このエピソードは、物質(例:乱用薬物、医薬品、他の治療)の生理学的作用または他の医学的疾患によるものではない。
広末さんの場合、報道されている行動(SAでの異常行動、病院での暴行)が上記の躁病エピソードの症状(易怒性、活動亢進、衝動性、判断力低下など)に該当し、かつ社会的機能に著しい障害(逮捕に至るほどのトラブル)を引き起こしていることから、双極性障害1型の可能性が考えられます。
ただし、最終的な診断は医師による詳細な診察と評価に基づいて行われるため、報道されている情報だけで断定することはできません。重要なのは、これらの行動が単なる性格や一時的な感情の問題ではなく、治療が必要な病気の症状である可能性があるということです。
4. アカシジアとは何か?双極性障害(躁うつ病)治療薬の副作用について解説
双極性障害の治療には、気分安定薬や抗精神病薬などが用いられますが、これらの薬には副作用が現れることがあります。その中でも特に注意が必要な副作用の一つに「アカシジア」があります。ここでは、アカシジアの症状、原因、そして双極性障害の治療薬との関連について解説します。
4-1. アカシジアの具体的な症状:「じっとしていられない」感覚
アカシジアは、「静座不能症」とも訳され、じっと座っていたり、静かに横になったりしていることができず、ソワソワ、ムズムズとした不快な感覚に襲われ、体を動かさずにはいられなくなる副作用です。
主な症状としては以下のようなものがあります。
- 主観的な不快感: 体の内側から湧き上がるような、落ち着かない、ソワソワ、ムズムズする感じ。灼熱感(焼けるような感じ)を伴うこともあります。精神的な焦燥感よりも、身体的なソワソワ感が強いのが特徴です。
- 客観的な動き:
- 座ったままでいられず、立ち上がって歩き回る。
- 足踏みをする、足を組み替える、小刻みに動かす。
- 体を揺する、姿勢を頻繁に変える。
この症状は、患者さん本人にとって非常に苦痛であり、不眠や不安、イライラ感を増強させることがあります。また、傍目には単に落ち着きがないように見えるため、元の病気(双極性障害の躁状態や不安焦燥)が悪化したと誤解されやすい点にも注意が必要です。
アカシジアは、薬の服用開始後や増量後、数日から数週間以内に現れる「急性アカシジア」が一般的ですが、数ヶ月以上経ってから現れる「遅発性アカシジア」や、薬を減量・中止した際に現れる「離脱性アカシジア」もあります。
4-2. アカシジアの原因:抗精神病薬などの副作用として
アカシジアの主な原因は、特定の薬剤の副作用です。特に、以下のような薬で引き起こされることが知られています。
- 抗精神病薬: 統合失調症や双極性障害の治療に用いられる薬です。脳内のドパミンという神経伝達物質の働きを抑える作用(ドパミン遮断作用)が、アカシジアの発生に関与していると考えられています。特に、第一世代(定型)抗精神病薬で起こりやすいとされますが、第二世代(非定型)抗精神病薬でも、特にアリピプラゾール(エビリファイ)などで比較的高い頻度で見られることがあります。広末さんの治療に使われる可能性のあるクエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)やオランザピン(ジプレキサ)でも起こり得ます。
- 抗うつ薬: SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などでも、まれにアカシジアが報告されています。双極性障害のうつ状態に対して抗うつ薬が使われる場合(通常は気分安定薬と併用)も注意が必要です。
- その他の薬剤: 一部の吐き気止めや胃腸薬などでも起こることがあります。
ドパミン遮断作用が主なメカニズムと考えられていますが、セロトニンやノルアドレナリンなど他の神経伝達物質も関与している可能性があり、詳細なメカニズムは完全には解明されていません。
4-3. 双極性障害の治療薬とアカシジアのリスク
双極性障害の治療、特に躁状態や精神病症状を伴う場合、あるいはうつ状態でも、抗精神病薬が使われることがよくあります。広末さんの場合も、診断名からこれらの薬剤が処方される可能性が考えられます。
双極性障害の治療に使われる可能性のある薬剤のうち、アカシジアのリスクが指摘されているものには以下のようなものがあります。
- アリピプラゾール(エビリファイ): 躁状態、うつ状態、維持療法に使われますが、アカシジアの副作用頻度が比較的高い(うつ病への追加投与で28.1%との報告も)とされています。
- クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ): 躁状態、うつ状態、維持療法に使われます。アカシジアのリスクはアリピプラゾールほど高くはないとされますが、起こる可能性はあります。
- オランザピン(ジプレキサ): 主に躁状態や維持療法に使われます。アカシジアのリスクがあります。
- リスペリドン(リスパダール): 主に躁状態に使われます。アカシジアのリスクがあります。
- ルラシドン(ラツーダ): 主にうつ状態に使われます。アカシジアのリスクがあります。
気分安定薬である炭酸リチウム(リーマス)、バルプロ酸(デパケン、セレニカ)、ラモトリギン(ラミクタール)、カルバマゼピン(テグレトール)自体がアカシジアを引き起こすことは稀ですが、これらの薬と抗精神病薬が併用されることはよくあります。
もしアカシジアと思われる症状が現れた場合は、自己判断で薬を中止したりせず、速やかに主治医に相談することが非常に重要です。医師は、原因となっている薬の減量や変更、あるいはアカシジアの症状を和らげる薬(抗コリン薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、β遮断薬など)の追加投与を検討します。アカシジアは治療可能な副作用であり、早期に対処すれば改善することがほとんどです。
5. 広末涼子さんの双極性障害(躁うつ病)の原因は何か?遺伝やストレスとの関連は?
広末涼子さんが双極性障害と診断されたことで、その原因について関心が集まっています。双極性障害はなぜ発症するのでしょうか?ここでは、現在の医学で考えられている双極性障害の原因、特に遺伝的要因と環境要因(ストレスなど)の関連性について、最新の研究知見も交えながら解説します。
5-1. 双極性障害の原因:まだ完全には解明されていない複雑な要因
まず重要な点として、双極性障害の明確な原因は、現在のところ完全には解明されていません。特定の原因一つで発症するのではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症に至ると考えられています。
主な要因としては、以下のものが挙げられます。
- 遺伝的要因: 病気になりやすい体質(脆弱性)が遺伝的に受け継がれる可能性があります。
- 環境要因: 人生における様々な出来事やストレスが発症の引き金(トリガー)となることがあります。
- 生物学的要因: 脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなど)のバランスの乱れや、脳機能の変化などが関与していると考えられています。
これらの要因がどのように相互作用して双極性障害を引き起こすのか、現在も世界中で研究が進められています。
5-2. 遺伝的要因の関与:家族歴との関係
双極性障害の発症には、遺伝的な要因が他の精神疾患と比較しても強く関与していることが知られています。
- 家族内発症率: 親や兄弟姉妹に双極性障害の人がいる場合、いない人と比べて発症リスクが数倍から10倍程度高まるとされています。
- 双生児研究: 一卵性双生児(遺伝情報がほぼ100%同じ)の場合、一方が双極性障害を発症すると、もう一方も発症する確率は40%~80%程度と非常に高いことが報告されています。これは遺伝要因の強い影響を示唆しています。
- 遺伝子の特定: これまでの研究で、双極性障害の発症リスクをわずかに高める可能性のある遺伝子は複数見つかっています(例:CACNA1C、NCAN、ANK3など)。しかし、「双極性障害の原因遺伝子」と呼べるような、単独で強い影響を持つ特定の遺伝子はまだ見つかっていません。おそらく、多数の遺伝子の組み合わせと環境要因との相互作用によって、発症しやすさが決まると考えられています。
広末涼子さんの家族歴については公表されていませんが、一般的に双極性障害の診断においては、家族に同様の病気の方がいるかどうかは重要な情報となります。ただし、遺伝的要因があるからといって必ず発症するわけではなく、あくまで「発症しやすさ」に関わる一つの要素です。
5-3. 環境要因とストレスの役割:発症の引き金となる可能性
遺伝的な素因を持つ人が、何らかの環境的な要因にさらされることで発症のスイッチが入ることがあります。特に、強いストレスは発症や再発の大きな引き金(トリガー)となり得ます。
- 心理社会的ストレス:
- ライフイベント: 就職、結婚、出産、離婚、死別、引っ越し、人間関係のトラブル、仕事上の大きなプレッシャーなど、人生における大きな変化や困難な出来事。
- 小児期の逆境体験: 幼少期の虐待(身体的・精神的・性的虐待)、ネグレクト(育児放棄)などの経験は、双極性障害の発症リスクを高めることが研究で示唆されています(発症リスクが約2.6倍になるとの報告も)。
- 身体的ストレス:
- 睡眠不足・生活リズムの乱れ: 不規則な生活や睡眠不足は、気分の波を不安定にし、再発を引き起こす可能性があります。
- 身体疾患: 他の病気(特に甲状腺疾患など)や、その治療薬の影響。
- 妊娠・出産: 周産期は特に気分の変動が起こりやすく、発症や再発のリスクが高まる時期とされています。
- 物質使用: アルコールや違法薬物の使用。
広末涼子さんの場合、10代から国民的な人気を得て活躍する中で、計り知れないプレッシャーやストレスに晒されてきたことは想像に難くありません。学業との両立、マスコミからの過剰な注目、プライバシーの侵害、そして近年の不倫報道や離婚、独立といった出来事も、大きな環境的ストレス要因となった可能性があります。キャンドル・ジュン氏が「過度なプレッシャーがかかると豹変する」と語っていたことも、ストレスが症状の引き金になっていた可能性を示唆しています。
5-4. その他の要因:性格傾向や脳機能の変化
- 性格傾向: かつては、双極性障害になりやすい性格として「循環気質(社交的、親切、活発)」や「執着気質(几帳面、責任感が強い、完璧主義)」などが挙げられていましたが、近年の研究ではこれらの関連性は必ずしも明確ではないとされています。
- 脳機能の変化: 脳画像研究などから、双極性障害の患者さんでは、感情や行動のコントロールに関わる脳の特定領域(扁桃体、前頭前野、海馬など)の活動や構造に違いが見られることが報告されています。また、神経伝達物質のバランスの乱れも指摘されていますが、これらが原因なのか結果なのかはまだ分かっていません。
結論として、広末涼子さんの双極性障害の原因を特定することは困難です。しかし、遺伝的な素因があった可能性に加え、長年にわたる芸能活動における強いストレスや、近年の様々なライフイベントが複雑に絡み合い、発症や症状の顕在化につながった可能性は十分に考えられます。重要なのは、原因探しに固執するのではなく、現在診断されている病気に対して適切な治療を受け、回復に専念することです。
6. 双極性障害(躁うつ病)と統合失調症の併発・鑑別について:違いと共通点
広末涼子さんが双極性障害と診断された一方で、精神疾患の中には症状が似ているものもあり、特に「統合失調症」との区別(鑑別診断)が重要になることがあります。また、まれに両方の特徴を併せ持つ「統合失調感情障害」という診断もあります。ここでは、双極性障害と統合失調症の主な違いと共通点、そして統合失調感情障害について解説します。
6-1. 似ているようで異なる二つの精神疾患
双極性障害と統合失調症は、どちらも脳機能の障害に関連する精神疾患ですが、その中核となる症状や経過は異なります。
- 双極性障害: 主に気分の変動(躁状態/軽躁状態とうつ状態)を繰り返す気分障害です。気分の波がはっきりしており、エピソード間には症状が落ち着く(寛解)期間があることが多いです。
- 統合失調症: 主に思考や知覚の障害(幻覚、妄想など)や、意欲の低下・感情の平板化といった陰性症状を特徴とする精神病性障害です。多くの場合、慢性的な経過をたどり、社会的な機能の低下が見られます。
簡単に言えば、双極性障害は「気分の波」が主役、統合失調症は「現実とのズレ(幻覚・妄想)」や「意欲・感情の障害」が主役の病気と言えます。
6-2. 症状の共通点と鑑別のポイント
両疾患の鑑別が難しくなるのは、以下のような症状の共通点があるためです。
- 精神病症状(幻覚・妄想): 統合失調症の中核症状ですが、双極性障害でも重い躁状態やうつ状態の時に幻覚や妄想が現れることがあります(精神病症状を伴う双極性障害)。特に躁状態の誇大妄想(自分は偉大だ、特別な力があるなど)や、うつ状態の罪業妄想(重大な罪を犯したなど)が典型的です。
- 思考や行動のまとまりのなさ: 統合失調症の「解体症状」が特徴的ですが、双極性障害の激しい躁状態でも、思考が次々と飛躍する(観念奔逸)、話がまとまらない、落ち着きなく動き回る、といった様子が見られることがあります。
- 意欲低下や引きこもり: 統合失調症の「陰性症状」として意欲欠如や社会的引きこもりがありますが、双極性障害のうつ状態でも同様に、何もする気が起きない、人に会いたくない、といった症状が現れます。
これらの症状が重なるため、特に病気の初期段階や、情報が少ない場合には診断が難しいことがあります。鑑別のための重要なポイントは以下の通りです。
- 気分エピソードの明確さ: 双極性障害では、躁状態やうつ状態といった明確な気分の波が存在し、それが症状の中心となります。統合失調症でも気分の変動は見られますが、双極性障害ほどはっきりしたエピソードを形成しないことが多いです。
- 精神病症状と気分の関連性: 双極性障害では、幻覚や妄想は通常、躁状態やうつ状態という気分エピソードの期間中に限定して現れます。一方、統合失調症では、幻覚や妄想が気分エピソードとは独立して、比較的持続的に現れる傾向があります。気分が安定している時期にも精神病症状が見られる場合は、統合失調症の可能性が高まります。
- 陰性症状の持続性: 統合失調症では、意欲低下や感情の平板化といった陰性症状が、陽性症状(幻覚・妄想)が治まった後も持続的に見られることが多いです。双極性障害でもうつ状態では似た症状が出ますが、気分が回復すればこれらの症状も改善する傾向があります。
- 病前の機能と経過: 双極性障害は、発症前は比較的社会的に機能しており、エピソード間には寛解して元の機能レベル近くまで回復することが期待できます(ただし、再発を繰り返すと機能低下が進むこともあります)。統合失調症は、発症前から社会的な機能が徐々に低下していることがあり、慢性的な経過をたどり、機能回復が難しい場合も少なくありません。
- 家族歴: 家族にどちらの病気の人がいるかも参考情報になります。
6-3. 統合失調感情障害とは?併存の可能性は?
まれに、統合失調症の症状(幻覚、妄想など)と、双極性障害の症状(躁状態やうつ状態)の両方の基準を同時に満たす期間があり、さらに気分症状がない期間にも幻覚や妄想が存在するという、両者の中間的な特徴を持つ病態があります。これを統合失調感情障害と呼びます。
DSM-5の診断基準の要点は以下の通りです。
- 統合失調症の主な症状(幻覚、妄想、解体した会話など)が存在する。
- 同時に、躁病エピソードまたは大うつ病エピソードの基準を満たす期間がある。
- 重要な点:気分エピソード(躁状態やうつ状態)がない期間にも、少なくとも2週間以上、幻覚や妄想が存在する時期がある。
- 病気の全期間のうち、気分エピソードが存在する期間が大部分を占める。
つまり、気分が安定している時でも幻覚や妄想が見られるという点が、精神病症状を伴う双極性障害との大きな違いです。統合失調感情障害は、存在する気分エピソードによって「双極型」と「抑うつ型」に分けられます。
広末涼子さんの場合、現時点で公表されている情報だけでは統合失調感情障害の可能性について判断することはできません。診断には、症状の詳細な経過を長期的に追っていく必要があります。
重要なのは、双極性障害と統合失調症は治療法(特に薬物療法)が異なる部分があるため、正確な鑑別診断が非常に重要であるということです。例えば、双極性障害のうつ状態に抗うつ薬を単独で使用すると、躁転(躁状態に移行すること)のリスクがありますが、統合失調症ではそのようなリスクは通常考慮されません。治療方針を決定するためにも、専門医による慎重な診断が不可欠です。
7. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とは?双極性障害(躁うつ病)との併発について
広末涼子さんは、双極性障害と同時に「甲状腺機能亢進症」とも診断されたと公表しました。この二つの病気は一見関係ないように思えるかもしれませんが、実は精神症状と関連することがあります。ここでは、甲状腺機能亢進症とはどのような病気か、そして双極性障害との関係性や併発について解説します。
7-1. 甲状腺機能亢進症の概要と主な症状
甲状腺機能亢進症とは、首の前側にある蝶のような形をした「甲状腺」という臓器が過剰に働き、甲状腺ホルモン(主にサイロキシンT4とトリヨードサイロニンT3)を必要以上に分泌してしまう病気です。甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を活発にする働きがあるため、このホルモンが過剰になると、全身の様々な臓器が常にフル回転しているような状態になります。
甲状腺機能亢進症の代表的な原因疾患がバセドウ病です。バセドウ病は自己免疫疾患の一つで、自分の免疫系が誤って甲状腺を刺激する抗体(TRAbなど)を作ってしまうことで発症します。20~30代の女性に多く見られますが、他の年代や男性でも発症します。
甲状腺機能亢進症の主な症状には以下のようなものがあります。
- 全身症状: 異常な発汗、暑がり、体重減少(食欲は増進することが多い)、疲労感、微熱
- 精神・神経症状: イライラ感、落ち着きのなさ、集中力低下、不眠、手の震え、不安感、気分の高揚(躁状態に似ることも)、抑うつ気分
- 循環器症状: 動悸(心拍数増加、心房細動などの不整脈)、息切れ、血圧上昇
- 消化器症状: 食欲亢進、軟便・下痢、排便回数の増加
- 甲状腺腫: 首の腫れ
- 眼球突出(バセドウ病眼症): 眼が前に飛び出す、まぶたが腫れる、ものが見えにくい、複視(ものが二重に見える) ※バセドウ病に特有
- その他: 筋力低下、月経不順(女性)
7-2. 甲状腺機能亢進症と精神症状(双極性障害様症状)の関係
上記の症状リストからもわかるように、甲状腺機能亢進症は精神症状を引き起こすことがあります。特に、イライラ感、落ち着きのなさ、気分の高揚、多弁、活動性の亢進、不眠といった症状は、双極性障害の躁(軽躁)状態と非常によく似ています。
そのため、精神科を受診した患者さんが、実は甲状腺機能亢進症が原因で精神症状を呈していた、というケースも少なくありません。逆に、うつ病や双極性障害と診断されていた患者さんが、実は甲状腺機能異常(亢進症または低下症)を合併していたということもあります。
甲状腺ホルモンは脳機能にも影響を与えるため、そのバランスが崩れることで気分の変動や精神的な不安定さを引き起こすと考えられています。MSDマニュアルなどの医学情報サイトでも、甲状腺機能亢進症は躁状態を引き起こしうる内分泌疾患の一つとして挙げられています。
広末さんの場合、事故前のSAでの行動や病院での興奮状態が、双極性障害の躁状態だけでなく、甲状腺機能亢進症による精神症状の影響も受けていた可能性が考えられます。
7-3. 双極性障害と甲状腺機能亢進症の併発:珍しいのか?
広末さんの病名公表を受けて、「この2つの病気の併発は非常にまれ」とコメントした専門家(森田豊医師)が報道されました。しかし、一方でネット上のコメントでは、「併発は珍しくないのでは?」という声や、実際に両方を経験している方の声も見られました。
- 「併発が珍しいと言ってる人って本当に専門家なの?(中略)甲状腺や副腎機能等)の場合、それが原因で精神症状が出るというのは、それこそ専門家であるならば容易に予測できること」
- 「双極性感情障害と甲状腺機能亢進の併発が珍しいというより まずは甲状腺機能障害に伴う精神症状を鑑別する必要があります」
- 「意外と甲状腺機能亢進症と双極性障害は 似ている要素があります。(中略)感情や気分が不安定になりやすいです。」
- 「併発するのはまったく珍しいことではないと……。」
- 「僕は長年うつ病なのですが、今年バセドウ病(甲状腺機能亢進症)になりました。」
実際のところ、双極性障害と甲状腺疾患(亢進症だけでなく機能低下症も含む)の関連性は、医学界で以前から指摘されています。
- 併存率: 双極性障害の患者さんは、一般人口に比べて甲状腺疾患を合併している割合が高いという報告があります。
- 相互の影響: 甲状腺機能異常が双極性障害の症状(特に急速交代型や治療抵抗性)に関与している可能性や、逆に双極性障害の治療薬(特に炭酸リチウム)が甲状腺機能に影響を与える可能性も知られています。
- 鑑別診断の重要性: 前述の通り、症状が似ているため、精神症状で受診した場合でも、甲状腺機能の検査を行うことが推奨されています。身体疾患としての甲状腺機能亢進症が精神症状の原因であれば、まずは甲状腺の治療が優先されます。
「非常にまれ」という表現がどの程度の頻度を指すかは不明ですが、少なくとも「全く関連がない」「併発することはありえない」というわけではなく、臨床現場では両者の関連性を考慮して診療が行われています。広末さんのケースが、純粋な双極性障害と、それとは独立した甲状腺機能亢進症の「併発」なのか、あるいは甲状腺機能亢進症が双極性障害様の症状を引き起こした(あるいは悪化させた)のか、またはその両方が複雑に関与しているのかは、詳細な診察と経過観察が必要です。
いずれにせよ、広末さんは精神的な側面(双極性障害)と身体的な側面(甲状腺機能亢進症)の両方から治療を受ける必要があります。甲状腺機能亢進症の治療(抗甲状腺薬、放射性ヨウ素内用療法、手術など)によって甲状腺ホルモンが正常化すれば、関連する精神症状も改善する可能性があります。両方の病状を総合的に管理していくことが、今後の回復にとって重要となります。
8. まとめ:広末涼子さんの双極性障害(躁うつ病)と関連情報
この記事では、女優の広末涼子さんが公表した双極性障害(躁うつ病)と甲状腺機能亢進症について、その経緯、元夫キャンドル・ジュン氏の発言との関連、病気の詳細(1型、原因、アカシジア、統合失調症との鑑別)、そして併発している甲状腺機能亢進症との関係性などを詳しく解説してきました。
最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- 病名公表の経緯: 広末涼子さんは2025年4月の交通事故・逮捕後に入院し、「双極性感情障害」および「甲状腺機能亢進症」と診断され、5月2日に公表。当面の芸能活動休止を発表しました。事務所は「体調不良」で済ませてきたことへの反省と、責任回避の意図はないことを表明しています。
- キャンドル・ジュン氏の発言: 元夫のキャンドル・ジュン氏は過去に広末さんの精神的な不安定さ(「心が壊れる」「豹変する」「2年に1回の周期」)について言及しており、今回の病名公表でその発言が双極性障害の症状を示唆していた可能性が再注目されています。
- 双極性障害1型とは: 気分が異常に高揚する「躁状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気のうち、社会生活に著しい支障をきたすほどの激しい「躁状態」が見られるタイプです。広末さんの事故前後の行動は、1型の躁状態の特徴と合致する可能性が指摘されています。
- アカシジアとは: 双極性障害の治療薬(特に抗精神病薬)の副作用として起こりうる、「じっとしていられない」強いソワソワ感やムズムズ感のことです。元の病気の悪化と間違われやすいため注意が必要です。
- 双極性障害の原因: 完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因(強いストレスなど)が複雑に絡み合って発酵すると考えられています。広末さんの長年の芸能活動におけるプレッシャーやライフイベントも影響した可能性があります。
- 統合失調症との違い: 双極性障害は「気分の波」が主体、統合失調症は「幻覚・妄想や陰性症状」が主体です。精神病症状の現れ方(気分との関連性)や陰性症状の持続性などが鑑別のポイントとなります。両者の中間的な「統合失調感情障害」という診断もあります。
- 甲状腺機能亢進症との関連: 甲状腺ホルモンの過剰分泌により、イライラ感、落ち着きのなさ、気分の高揚など、双極性障害の躁状態に似た精神症状を引き起こすことがあります。双極性障害との併発も報告されており、両者の関連性を考慮した治療が必要です。
- 今後の見通し: 双極性障害も甲状腺機能亢進症も、適切な治療を継続すれば症状をコントロールし、回復することが可能です。広末さんには、焦らずに心身の回復に専念してほしいという声が多く寄せられています。
広末涼子さんの今回の公表は、多くの人にとって双極性障害や甲状腺機能亢進症といった病気への理解を深めるきっかけにもなりました。これらの病気は誰にでも起こりうるものであり、決して特別なことではありません。社会全体で正しい知識を持ち、偏見なく温かく見守る姿勢が求められます。
広末涼子さんの一日も早い回復を心からお祈りするとともに、今後の情報にも注意を払っていきたいと思います。
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